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小林至博士のゴルフ余聞

ゴルフは一発、ファウルもボールもない

2021/02/28 18:30

練習場ばかりのゴルフライフで、気をつけなければいけないことは、ああでもないこうでもないとスイングをいじり回すことである。きのうよりきょう、きょうよりあしたと前を向くこと自体は素晴らしいこと。だが、スポーツでも勉強でも、上達したければ基礎固め、反復練習で体あるいは頭に馴染ませる必要がある。

「型があるから型破り。型がなければ、それは形無し」とは、故中村勘三郎さんが「勘三郎さんの演技は型破りですね」と問われて発したとされる名言だが、野球界でも金言として、多くの名指導者が引用してきた。私が10年間仕えた王貞治さんも、打撃フォームに悩む選手に「守・破・離」の思想とともに贈っていたことを思い出す。

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私は三流選手だったが、フロント時代を含めてそれなりの数の選手を見てきた。投手にせよ野手にせよ、コロコロとフォームが変わる選手は、才能があっても早々に消えていった。ゴルフでも同じだと思う。

その昔、私は米国でゴルフチャンネルという会社に勤め、ゴルフレッスン番組を4年あまり担当した。グレッグ・ノーマンタイガー・ウッズ、デビッド・レッドベター、ブッチ・ハーモンら世界最高クラスのスイング理論はどれも説得力に満ちあふれており、翻訳と吹き替えの業務を通して、頭にたたき込んでは、練習やラウンドで試してみた。

だが、どんな一流の金言も継続あってこそ。即効薬にならないと身をもって知った。理屈よりも再現力と悟って、日々、芝から打てるフロリダのゴルフ環境も奏功し、USGAハンディキャップ2.7まで腕を上げた。ちなみに今は11.3。当時を思えば、ちょっぴり悔しいが、これが現実、実力である…なんて悟りの境地には達していない。

ゴルフ誌のレッスンを読み、YouTubeで人気のレッスン動画を見ては「これだ!」と膝を打ち、練習ではタブレット端末で動画撮影をしながら試す日々。自分には不向きな打法も中にはあるが、大抵それなりに効果を発揮する。つかんだ、と思うこともしばしばだが、案の定、長続きはしない。そんな過程を繰り返しているうちにドツボにはまる…。

野球では変化球を憶えてから、試合の勝負どころで使えるようになるまで1年はかかる。試合では取り返しのつかない場面もあるが、野手はファウルなら打ち直せるし、投手ならカウント次第でストライクゾーンから離れたところに遊び球を投げることも可能だ。一方、ゴルフはご承知の通り、すべてが一発、ファウルもボールもない。

なぜこのような迷路にはまり込んだのか。アホだなあ、と自分を責めるような選手は決して一流になれない、というのも、野球とゴルフの体験、見聞で得た知恵である。私がゴルフチャンネル在籍時に同社会長だったアーノルド・パーマー氏はミスショットをしたらクラブか、キャディか、風のせいにして割り切り、切り替えていたと述懐していた。その話を王さんにしたら、野球でも同じ、二兎を追う者は一兎をも得ずだ、と。

よし、今回の迷宮入りはコロナ禍のせいにして、切り替えよう。春はもうすぐそこだ。(小林至・桜美林大教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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