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2013年 ハッサンII ゴルフトロフィー
期間:03/28〜03/31 場所:ゴルフ・ドゥ・パレロイヤル(モロッコ)

上杉隆のヨーロピアンツアー“プロアマ”潜入記~第1回~

「モリナリ~、モリナリ~♪」

桜満開の東関東自動車道。成田空港に向かう道中、ハンドルを握る私は完全に浮かれていた。前夜からほとんど寝ていないにも関わらず、私はひとり車内で口ずさむ。

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「モリナリ~、モリナリ~♪」

歌詞が違う。決定的に違う。だが、マイアヒだろうが、モリナリだろうがその時の私には無関係だった。

道は、千葉のゴルフ場への通い慣れたものだが、今回の目的地は違った。目指すはアフリカ大陸西端、大西洋に面したマグレブのひとつ、モロッコ王国である。

「ハッサン2世トロフィーのプロアマに出ませんか?」

GDOのI記者から素敵な誘いがあったのは今年初めのことだった。モロッコで開催されるハッサン2世トロフィーは、近年ヨーロピアンツアーに組み込まれたばかりのトーナメントである。しかし、その歴史は古く、今年で40回を数える伝統的な大会だという。しかも、同大会はモロッコ王室が後援し、大西洋に面した同国最高レベルを誇るゴルフコースは、なんと、宮殿の中にあるというではないか!

宮殿の中――。まさしく王様気分を味わえるはずだ。そうしたコンディションであるならば、トッププロたちも喜んで参集するに違いない。実際、欧州のみならず、世界中から多くのプロが参加している。過去にはビリー・キャスパー(米)やリー・トレビノ(米)、セベ・バレステロス(スペイン)、ニック・プライス(ジンバブエ)、アーニー・エルス(南ア)、ビジェイ・シン(フィジー)といった面々が栄冠を勝ち取っている。

かつては日本からも矢野東平塚哲二などが参戦している。しかし、今年は日本からはひとりもいないという(中国、韓国がひとりずつ)。それならば、私が日本代表になるのではないか(プロアマだが)。

そういえば、アマチュア競技(東京都アマ/関東アマ)出場のためにわざわざ作ったタイトリストのボールには、ジャパンブルーでUESUGIと刻み、さらにその上には「日の丸」を印刷している。このボールが、大西洋の海風に向かって完璧な放物線を描いて飛んでいく様子がすでに目に浮かぶようだ。

今年から、ラグジュアリー&アスリートゴルファーを標榜している私に果たしてこの誘いを断る理由があるだろうか。

出発前日、プロ=アマの相手が確定した。あのモリナリの兄(エドアルド)だという。全米アマを制し、フェニックストーナメントの歴代チャンピオンのひとり、相手に不足はないではないか(相手は不足に違いない)。

そして、他の同伴競技者も決まった。ヨーロピアンツアーの公式ワインプロバイダーでボルドーワインの名門、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社CEO、ユーグ・ルシャノワーヌ氏(HDCP 3.3)とドイツゴルフオンラインGmbHのチーフ・エディター、ティム・スタルケ氏(HDCP 8.8)だという。日・独・伊とフランスがモロッコの地で一戦を交えるというのはあまりにできすぎた話ではある。いや、それよりも、なんというハイレベルでハイクラスな闘いなのか。

だが、私には自信があった。前の週、人生初のプロ=アマ(Tポイントレディスゴルフトーナメント)に出場して、中山三奈プロとラウンド、感覚をつかんでいる。

パリ、シャルル・ド・ゴール空港で乗り換えたエールフランス機がゆっくりと高度を下げはじめた。街の明かりが眼下に見える。カサブランカの夜の静寂(しじま)のなんと饒舌なことだろう。時刻は午後11時を過ぎている。最終目的地のアガディールまではさらに車で5時間かかるという。だが、私の心は依然として躍っている。そしてVIP用のメルセデスの後部座席でやはり口ずさむのだった。

「モリナリ~、モリナリ~♪」

私の3日間の前線基地である「アガディール・ソフィテル・ホテル・タラソー&スパ」に到着したのはプロ=アマ当日の午前4時過ぎであった。(上杉隆~続く~)

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