シームを突き動かすマスターズデビューの大望
2013年 ハッサンII ゴルフトロフィー
期間:03/28〜03/31 場所:ゴルフ・ドゥ・パレロイヤル(モロッコ)
ゴルフと、発展途上国モロッコが目指す未来の関係性
2013/03/30 20:00
1971年に始まったこの大会は、今は亡き元国王のハッサン二世によって開催されたことがはじまりだ。そして2010年からヨーロピアンツアーに加わり、今年で通算40回目の大きな節目を迎える。開催主旨はモロッコに“ゴルフ”というスポーツを普及させることを大きな柱としているのだが、とは言うものの単なる普及活動にとどまらず、発展途上国であるモロッコの未来がその先にある。
大会開催前から、街や周辺企業が総力を挙げて、国を「ハッサンII ゴルフトロフィー」一色に染め上げる。市内のあらゆる場所には大会のフラッグや大会パネルが掲げられ、選手や関係者、メディアを運ぶバスやコーテシーカー(Courtesy Car)が準備される。ホテルマンや宮人、ツアー関係者が一同に大会成功の為に献身し、亡き国王の意思を継いだムーレイ・ラシッド王子に敬意を表して手を取り合う。“ゴルフをビジネスツールに”というハッサン二世のビジョンは、モロッコの国民の“街おこし”の精神とうまく疎通しているのだ。
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モロッコの人口約67万人のうち、国内のゴルフ人口は約1%にも満たない。アフリカ大陸では、多くの名プレーヤーを輩出してきた南アフリカに次いで2番目、近隣アラブ諸国のゴルフ人口と比べても、その数は多いほうだと言う。モロッコ政府も積極的に、ゴルフ場に勤務する子供たちに無料でゴルフ場を開放したり、キャディが仕事の合間にプレー出来る環境を与えるなど、能力のあるプレーヤー輩出に注力を続けている。現在は国内に24コースを有しているモロッコだが、3~4年以内には約40コースまでの増設を検討するなど、諸外国からのゴルフ観光誘致も図っている。
海外からモロッコへ来るゴルフ観光客の年間総数は約8万人。国籍の内訳ではフランスが最も比率が高く、次いでドイツ、イギリスが続く。ゴルフからは話が逸れるが、毎年12月にはもうひとつ、国を挙げての大規模なイベント『マラケッシュ国際映画祭』も開催される。スポーツ・文化の推奨が、国益の潤沢に大きな影響力をもたらすことは間違いなさそうだ。
今大会が行われているモロッコ、アガディールは首都ラバトから南へ約500キロに位置する港町、ヨーロッパからの旅行客に人気のビーチリゾートだ。1950年の大地震で崩壊後、再建された街は西洋の雰囲気と近代的な一面を併せ持つ美しい街並みである。日本からはパリや、ドバイを経由して約30時間のフライトだが、広大なアフリカの大地、美しい景観のゴルフリゾートの数々を前に旅の疲れは一気に吹き飛んでしまうことだろう。(モロッコ・アガディール/糸井順子)