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道半ばのスイング改造 石川遼の苦悩の行方は

◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(13日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)

「ホントはあまり言いたくないんですけど…。」。もう2年半前になる。2020年2月、フロリダ州での米ツアー「ホンダクラシック」の予選ラウンドを終え、石川遼は何かを悟ったように表情を失っていた。「…今の自分のスイングでは厳しいね、PGAツアーは。自分がそう思っている限りはムリだと思う」

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2017年秋、かつての主戦場だった米国のシードを失って日本ツアーに復帰。19年に年間3勝を挙げ、翌年に推薦出場のチャンスをもらった大会は、通算13オーバーの大たたきで予選落ちした。打ち砕かれた期待。難コースに立ち向かえないショット、とりわけロングゲームに弱点を感じていた石川は「考えていることがある」と言い残してコースを去った。

新型コロナ禍が本格化してきた春先、石川はSNSをきっかけに田中剛コーチと出会い、指導を仰いだ。再現性を高めるスイングを求めて大幅に動きを改造。コースマネジメントにもメスを入れ、一緒に遠征を繰り返して攻め方のバリエーションを増やすことも目指した。

30代を迎える前の“手術”にはこれまでにないほど大きな“痛み”を伴った。力強さを失った動きは安定感のアップはおろか、飛距離のとてつもないロスを招いた。2020年10月の「日本オープン」。卓越したショートゲームで3位に入りながら、300yd級にあった1Wショットの飛びは260yd前後にとどまった。

「いつになったら、戦える態勢になるだろうか」。隣で見守り続けていた佐藤賢和キャディが明かす。苦しみはそれで終わらなかった。「去年(2021年)の方が“戦えない感じ”だった。(アイアンも)何ヤード飛ぶか把握できない。スイング(の形)に特化していたから、力感も安定しない。ウェッジの縦の距離にもバラツキがあった」。アプローチとパターで必死にスコアを作る、ショートゲームに負担がかかる戦いが長く続いた。

光が見えてきたのは、今年に入ってから。相棒はそばで「トレーニングによって、振らなくても飛ばせる力がついてきた」と見る。ゆったりとしたバックスイング、低いトップは改造3年目に入ってようやく定着した。石川本人も「だいぶフェース(の芯)に当たってきている。スイングを(大きく)いじっている状態」から脱却し、次の段階に入ったと語る。

「あとは自分の感性を吹き込んでいく。ゴルフで言う“当て感”。例えば、繊細なバンカーからクリーンに打つ、スライスで大きく曲げるといった、コントロールを最近は新しいスイングのプレーンの中でできるようになってきた。中途半端なスイングは減ってきている」

練習場で培ってきたものを、実戦で試せる機会は今年、あと3試合になった。「今が一番大事。ここでしっかり固めていく。勝てたからいい、ではなく、大事にワンショット、ワンショットを打っていく」。2年11カ月ぶりの優勝も通過点。道はまだまだ続いていく。(静岡県御殿場市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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