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ツアーデビュー戦 嘉数光倫、父の教え

小田孔明片山晋呉藤田寛之…ツアーを代表するトッププレーヤーが上位にひしめくリーダーボードに、見慣れない名前が燦然と輝いていた。

北海道の札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コースで開催中の「ANAオープン」2日目。トップから4打差、6アンダーの7位タイにつけるのは、今大会が初のツアー出場となった嘉数光倫(かかず・てるみち)。精悍な顔つきを見せる新鋭は、沖縄県出身の23歳。父・森勇(しんゆう)さんは、かつて諸見里しのぶや、比嘉真美子を指導したティーチングプロという家系だ。

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光倫少年がゴルフを始めたのは9歳の時。父の影響で、幼少期から大人用のクラブを遊びで握るなど、もちろん練習環境は最高だったはずだが「英才教育とはいえなかったと思います」と本人は言う。

サッカーや水泳にも興じた小学生時代。親からの押し付けではなく、自らプロゴルファーになるという夢を持った。その年のクリスマスにもらったプレゼントが、ジュニア用のクラブセット。以降、めきめきと力をつけ、名護高時代に沖縄県ジュニアを制覇。東海大九州校ゴルフ部時代の2010年には全国大学対抗戦で個人戦1位に輝くなど、トップアマとなった。

小さい頃からの憧れは、タイガー・ウッズ。そして同じ沖縄出身の宮里優作だった。「身長もそれほど大きくないのに、すごいボールを打たれる。カッコいいなあと思っていました」。これまで面識が無かったが、この日のラウンドが終わった後、兄・聖志と並んでいたところに、あいさつに出向いた。「きょうのプレーよりも緊張したんです」と思わず照れ笑い。「なんて言ったらいいか、ずっと考えてました…」

そんな初々しい表情も見せるルーキーだが、話の受け答えは穏やかなもの。プレー中も冷静な判断や選択が光る。

指導者の父から口酸っぱく言われ続けてきたこと。それがゴルフとの静かな向き合い方だった。

「ゴルフというスポーツは“対戦相手”と直接戦うわけではない。打つたびに『静かにしてください』と周りにお願いしているように、選手が守られているスポーツ。極端な言い方をすれば、“甘い”スポーツ。バスケットボールやサッカーは、相手に邪魔されながらやるんだから。ちょっとそっとで、騒がず、動じるな」

プロテストを通過した8月末にプロ転向。今月初旬に行われたローカル競技「北海道オープン」でいきなり優勝した。ちょっとやそっとのことでは動じない―。決勝ラウンドでも、そして長いプロ生活も、同じ姿勢を貫ければきっと先は明るいはずだ。(北海道北広島市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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