単独首位で自身初メジャータイトルに突き進む石川遼だが、その心情は意外な思いで占められている

東京よみうりCCで石川遼がこの日奪ったバーディは計10個。国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」3日目に、首位タイから出て「63」（パー70）とスコアを伸ばし、自身初のメジャータイトル獲得に向けて通算11アンダーの単独首位に浮上した。だが、石川はバーディを積み重ねながら、そこはかとない寂しさに包まれていた。「これが日本ツアーの現状なのか…」。会場の盛り上がりがひと昔前と違うことを、その肌が敏感に感じていた。

会場の最寄り駅までは、日本一の繁華街・新宿から電車1本で30分。国内男子ツアーの試合会場でも屈指のアクセスの良さを誇る。暖かい陽射しが照りつけて絶好のゴルフ観戦日和となった土曜日だったが、それでも会場に足を運んだギャラリーは6028人にとどまった。昨年同日を下回り、このままのペースで行けば4日間合計で2万人ちょっととなる。「盛り上がり的には今ひとつかなと。思っていたよりも少なかった」と石川はいう。自身が史上最年少で賞金王を獲得した翌年の2010年大会は、4日間で3.7万人が訪れていた。

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「自分が賞金王になったときの世界ランクは40～45位くらいだったと思うけど、今週は世界ランク50位以内の選手がひとりもいない。もっとレベルの高い試合を見せていかないといけないし、それはお客さんが一番分かっている。それが数字に出ていると思う」

リーダーボードを見れば、通算11アンダーの石川の下に通算8アンダーの小田孔明。その下に通算5アンダーのハン・ジュンゴン（韓国）が続いている。「孔明さんの下にまた3つ差があるのにびっくりした。今日のコンディションなら全体的に伸びると思っていたのでちょっと意外。今日の“63”はナイスプレーだと思うけど、通算7アンダーにも数人いて、通算6アンダーにも数人いるようなイメージだった」と石川はいう。下から突き上げてくる選手層の厚さは、米ツアーで嫌というほど経験している。逆に言えば、これが日本ツアーの選手層。言葉の裏側で伝えようとした意図は明確だった。

「男子ゴルフをもう一度、新しい人も含めて、注目してもらえるようにやっていかないといけない。ゴルフファンを第一に、ファンの立場に立ってトーナメントを考えることが大事だと思う」

記者会見での話題は、日本のゴルフ界が抱える問題へと自然にヒートアップしていった。

「細かい話だけど…」と前置きした石川は、かつてアメリカで、左打ちでラウンドをしようと思って借りたクラブが1年前のモデルだったのに対し、日本では30年前のクラブが出てきたこともあるという話を苦笑いで披露した。「レンタルクラブの質とか、値段とか。それに、バーやカフェがある新たなスタイルのゴルフ場とか、初心者向けのショートコースやインストラクターがいたりするゴルフ場があったりしてもいいと思う。門戸を広げるというか、ゴルフの敷居が高くないよ、ということを伝えたい」

若い人たちをいかにゴルフに惹きつけるか？トーナメントを盛り上げるプロゴルフアーとしての役割だけでなく、日本を代表するゴルファーとして、ゴルフ界への熱い思いが湧き出てきて止まらない。「僕らが当事者だし、実践していく側だと思う。ゴルフファンの目線になって考えれば、結構シンプルなことだと思う」。石川は30分近く話した記者会見で、半分近い時間を自身のプレー以外の話に費やした。（東京都稲城市／今岡涼太）