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11月に今季3戦目…主戦場を失った今田竜二の2016年

◇国内男子◇HEIWA・PGM選手権 事前情報(2日)◇総武カントリークラブ 総武コース (千葉)◇

松山英樹の米ツアー3勝目(WGC HSBCチャンピオンズ)に沸いた前週、複雑な心境で日本の地に降り立った男がいる。2008年に日本人選手としては3人目の米ツアー優勝を果たした今田竜二。それから8年あまりが過ぎ、いま大きな岐路に立っている。

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今田は今週、主催者推薦で国内ツアーに出場する。6月の「ISPSハンダグローバルカップ」、7月の「長嶋茂雄招待セガサミーカップ」に続く今季3戦目。意気込みを尋ねると、前2戦はいずれも予選落ちに終わっており、「いまはゴルフの調子を説明できる状況ではない」と、曇りがちな表情で近況をポツリポツリと話し始めた。

中学時代にゴルフ留学で米国へ渡った今田は、2005年に米ツアーへ昇格。大学時代から現地でも注目されてきた実力を発揮して何度も上位争いを演じてきたが、12年を最後にフルシードを喪失した。以後は、米下部ツアーを主戦場としながら、推薦で米ツアー出場を続ける日々。本格参戦した松山と入れ替わるように、2015年はウェブドットコムツアー2試合、PGAツアー4試合の出場のみ。今シーズンはいずれも0試合という1年を送った。

本人が言うには、自宅のあるフロリダ州タンパ付近で「そこそこの練習とトレーニング」を繰り返す毎日で、腕試しとなるミニツアーへも2~3戦の出場にとどまったという。

「なんのために、なにを目指して練習しているのかわからない」と寂しげに打ち明けた。「(戦える)場所がないということはモチベーションさえ奪ってしまう。(試合が続けば)1試合、また1試合とフォーカスできたものがなくなってしまうのだから」。戦い続けてきた男は困惑していた。

戦う場所を求めながらも、そこに向かう気持ちが湧いてこない。寄る辺ない葛藤は、記憶を過去へとさかのぼる。今田の名を日本のゴルフファンに記憶させた08年の「AT&Tクラシック」優勝。その後も好成績を維持できたこと。気持ちをさらに高めていけたこと。シードを保持した12年までの記憶と、それ以後の記憶に明確な濃淡の差があることに気が付いた。

自分と向き合う時間の増えたこの1年、わずかな気持ちの変化もあった。これまで日本ツアー転向の意思はないとしていたが、「今年はQT受験を考えた」という。

だが、タイミングがわずかに遅かった。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の規定上、今田は“海外PGAライセンス保持者”にあたるため、セカンドクオリファイ(2次予選会)からのエントリー。今田の決断は、エントリー手続きの締め切り(7月15日)が過ぎた頃だった。嘆願書による申請手続きを行って過去の実績が認められれば、サードクオリファイ(3次予選会)からの受験も可能性ゼロではなかったが、「今の自分にはしがみついていく価値もない。でもこのまま推薦出場に頼るのも本意ではない。自力で出られるように努力しないと意味がない」と手続きしなかった。

先月に40歳となったことが、再挑戦への意欲を鈍らせている現状もある。ケガや痛みと向き合いながら転戦を続けていくには覚悟が必要だ。「本気で身を据えるつもりでQスクール(予選会)を一から受け直すか、第一線を退くか――」。

最後は自分の気持ち次第とわかっているが、18年間のプロ生活を振り返るたび、気持ちは大きく揺れ動く。「まだ決めかねている」。

日本ツアーだけでなく、すでに新シーズン(2016-17年)がスタートしている米ツアーへも道は断たれた。2017年に限れば、彼に残された道は、今週の優勝のみ。優勝すれば今シーズンの残り5試合、来季から2年間の国内ツアー出場権を獲得できる。

忸怩(じくじ)たる思いに駆られながらも、硬く口を結び必死にもがこうとしている。“戦う男”の矜持が今週のプレーから滲むはずだ。(千葉県印西市/糸井順子)

糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール

某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。

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