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水没の惨劇から“夏”の高麗芝に仕上がるまで 女子最終戦コースの舞台裏

2023/11/26 08:30

◇国内女子メジャー◇JLPGAツアー選手権リコーカップ 3日目(25日)◇宮崎CC(宮崎県)◇6497yd(パー72)◇晴れ(観衆3015人)

国内メジャー最終戦の会場となる宮崎CCは、昭和35年(1960年)開場と県内で最も古い歴史を持つゴルフ場だ。同コースでの開催は今年で21回目。不動裕理宮里藍がし烈な賞金女王争いを演じた2004年、最終戦を2連覇した古閑美保が初めて女王の座を射止めた08年と、数々のドラマチックな展開の舞台となってきた。

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例年に比べて世界的な暑さとなった今夏は、宮崎でも最低気温が28℃以上という日が続いた。30度以上の真夏日が観測されたのは年間85日に達し、最も多かった1990年の86日に迫る数字だった。

幸いなことに当地のグリーンは暑さに強い高麗芝。開幕前の記者会見で、コースセッティング担当の中野晶は「ことしは“夏”の高麗芝。パターとボールそれぞれの芯を合わせてしっかりとしたストロークをしないと、ちょっとでも緩めばパットは入らない」と仕上がりに太鼓判を押した。ショートパットを前にした多くの選手が、気を緩めず慎重にセットアップする姿からも元気な芝の状態が伝わってくる。しかし、すべては2年前の“惨事”を乗り越えての出来栄えとグリーンキーパーの長友利彦さんは回顧する。

三ヶ島かなが優勝した2021年、大会開幕が迫る時期に数ホールのグリーンが水没するほどの大雨に見舞われた。「トーナメントまであと数カ月という9月に線状降水帯ができて、2、3ホールが浸水した。2番のグリーンなんかは池になって。ポンプを借りて24時間作業を進めたけど、どうしても水没してしまうとなかなか回復しない」。グリーンが負った大ダメージの完全復旧に、長期的なケアが求められた。

毎日スマホとにらめっこをし、天気予報をチェックする日々。気温、風、雨量、湿度…と情報を収集し、週間予報も常に把握してきた。「雨が降るのも嫌だけど、ずっと晴れが続くのも嫌。ここを目標にしている選手もいらっしゃるだろうし、ちゃんとグリーンの転がりは良いか、スピードは遅いかなど、常にチェックしていますね」。いつ不測の事態が起きるか分からない不安を抱えながら、グリーンの状態が気がかりで眠れない日もあったという。

「厳しい状態から回復に努めてきて、いまがある。苦労もあったけど、本来の高麗の芝目や厳しい強さがあるグリーンに仕上がっているかと言われれば、そうですね」。とはいえ、100%の仕上がりかと聞かれれば、まだ頭を縦には振らない。「個人的には、まだグリーンの状態は気に入っていない。 (速さを計測する)スティンプメーターも9.25フィートで、10フィートにしたい。課題はまだまだいっぱいあります。もっといい状態にしていきたい」

昨年からは高麗芝を研究している宮崎大学の教授とのやり取りも始め、外部と連携しながら最良なグリーンを目指している。重労働で繊細さも必要な仕事ぶりが、より均一でフェアな条件をつくる。最後のカップインまで目を離せない白熱した女王争いが繰り広げられているのも、長友さんをはじめとした職人スタッフの働きがあってこそなのだ。(宮崎市/石井操)

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