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「終わりだと思った」大江香織の孤独な戦い アンカリング規制に試行錯誤

ひじを直角に曲げ、中尺パターのグリップエンドを握る左手。右ひじは肋骨付近に固定し、脇を締める。手首を外へ折った右手の甲を体の正面に向け、薬指と中指でグリップを挟み込む。

丁寧なルーティンからセットされるパッティングの構え。見ようによっては、グリーン上で何かを考え込み、腕組みでもしているかのようである。

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でもこのスタイルは、大江香織が人知れず考えに考えをめぐらせ、導き出したアドレスだ。パターの一部分を体に固定させることを禁止するアンカリング規制が始まる来年1月まで4カ月余り。パットイップスが原因で、10代の後半から長尺パターを愛用してきた25歳の前に、デッドラインは刻一刻と迫っている。

ここ数年、何度も新しい打ち方に取り組んできた。「オフにも何回もチャレンジしてみたんですけど、やっぱりだめで…。長いのなら打てるんですけど…」。来年以降に目を向けることの必要性は誰よりも分かっている。ただ、目の前の試合で稼がなければ職場すら失ってしまう。

ジレンマを抱えながら、新しいルールと再び向き合ったのがこの夏のオープンウィーク。「誰か別の選手を参考にしたというわけではないんですけど…近いのは櫻井有希さんですかね」。苦悩の末に2週前の「meijiカップ」から実戦で導入した。「これなら、しっかり手が動く」――。

アンカリングのルール規制が決定した2013年、大江は「わたしはもう終わりだ」と思ったという。通常の長さのパターでショートパットが入らず、イップスを自認した高校3年生の夏と同じように。そして「最近も“終わった”って思ってました(笑)」

けれどこの夏は少し違う。「いまは、ゴルフが楽しい」。ここ2試合は52位、予選落ち。今週の「CAT Ladies」も46位と下位で決勝に進んだが、ある意味で目下の成績は二の次だ。「パットが入るとか、入らないとかじゃないんです。打てるから、楽しい」。今後も、この構えがベストかどうかは分からない。それでも、ただ打てる喜びを感じられる限り、彼女のキャリアはきっと終わらない。(神奈川県箱根町/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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