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プロキャディが目指す“もう1つのオリンピック”

◇国内女子◇大王製紙エリエールレディスオープン◇エリエールGC松山(愛媛県)◇6474yd(パー72)

それまで縁遠いと思っていたことが、突然身近に感じられる瞬間がある。自分には関係ないと思っていたのに、急に興味が湧いてくる…。パラリンピックのゴルフ競技。プロツアーに帯同する顔見知りのキャディが、その出場を目指していると聞いたとき、多くの「?」とともに、新しい扉がそっと開かれた気持ちがした。

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最初に浮かんだのは、彼はなにか障害を抱えていたのか?という疑問だった。健常者と同じように(もしくは一般的なレベルよりも上で)プロキャディとして仕事をする姿を見ていただけに、いままでそんなことを考えもしなかった。

“エリエールブルー”のつなぎを着て、その週は保坂真由のキャディとして大会に臨んでいた。2日目の最終9番(パー5)。イーグルを獲って通算2アンダーにすれば、予選通過の可能性があると思って眺めていた。フェアウェイから打った3打目は、ピン手前に落ちてそのまま本当にカップイン!だが「えっ!?」と驚いた表情から笑顔に変わったのは、同組で回る上原美希だった。保坂は3打目を寄せきれずにパーとした。クラブハウスへ続く坂道を登る彼の肩に、重そうなキャディバッグのショルダーベルトが食い込んでいた。

市原大輔、36歳。国内男子ツアー1勝の市原建彦を兄に持ち、自身も中学3年時の世界ジュニアで6位に入るなど、プロへの道を目指していた。だが、研修生だった2004年、交通事故に遭って3日間意識不明の重体となる。9カ月の入院生活の末に退院したが、“右手全廃”となり、障害者3級に認定された。握ったり、動かしたりは出来るものの、いまでも右手の感覚はないままだ。

今年のリオ五輪で112年ぶりにゴルフ競技がオリンピックに復活した。だが、パラリンピックでのゴルフ競技はまだ実施されていない。リオ・パラリンピックへ向け、2010年にゴルフ競技の申請が行われたが、却下された。理由は、“定期的な世界選手権が開催されていない”、“障害者ゴルファーの世界ランキングが存在していない”、“障害者ゴルファーの明確なクラス分けが確立されていない”ことなどだった。2020年の東京大会へ向けては、その申請すら行われなかった。

「まだまだなんですよ」と、市原は苦笑う。だが、動きがないわけではない。2014年には「第1回 世界障害者ゴルフ選手権」が日本を舞台に行われた。2015年にはリー・ウェストウッド(イングランド)が欧州障害者ゴルフ協会のアンバサダーに就任し、同競技の認知向上に一肌脱ぐことを約束した。今年初めにはIGF(国際ゴルフ連盟)が、IPC(国際パラリンピック委員会)に加盟した。

ゴルフがパラリンピック競技となるのは、早くても2024年以降。だが、そのときに喜ぶであろう人物の顔が1人は思い浮かぶという事実が、この話をより身近なものにしてくれた。(愛媛県松山市/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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2016年 大王製紙エリエールレディスオープン



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