渋野日向子の海外生活“中間報告” 「大人にならなきゃ」
2020年 KPMG全米女子プロゴルフ選手権
期間:10/08〜10/11 場所:アロニミンクGC(ペンシルベニア州)
大人の階段上る? 渋野日向子の海外生活“最終報告”
渋野日向子が前週「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で2カ月に及ぶ長期海外転戦を終えた。ディフェンディングチャンピオンとして予選落ちの悔しさを味わった「AIG(全英)女子オープン」を含むスコットランドでの2連戦、予選を突破して戦い抜いた米本土での4試合。サポートスタッフの目を通じて渋野の変化を切り取った。
■クロスハンドは渋野から「やりたい」
青木翔コーチは、「日本(アース・モンダミン)で落ちて、スコットランドで2試合連続(予選落ち)。悔しかったでしょうし、本当にきつかったと思います」と胸中を思いやる。
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「予選を通るだけじゃダメだとは思いますし、甘やかすわけじゃなく」と前置きした上で、「アメリカに来て、僕は4試合予選を通れればいいという目標を掲げていた中でも1,2試合は落とすかもしれないと思っていました。それを苦しみながらでも踏ん張って、すべて予選を通ってこられたというのは、十分な結果だと思います」と評価する。
「ショートゲームがうまくなったのは、やっぱり大きい。練習では、いろんな状況から、いろんなアプローチを打てるようになってきています。(あとは)細かい距離感、芝生の違い、いろんな変化を察知して(試合で)やっていくには、経験しつつ、練習していくしかない」。技術面の課題克服へ土台ができつつあることを実感した以上に渋野自身のメンタルの成長を挙げた。
「『どうしたらいいですか?』と言っていたのが、『こうしたい』『ああしたい』という言葉が出てくるようになりました」。米国本土での前半2試合で取り入れたパッティング時のクロスハンドは、渋野からトライを申し出た。後半2試合を前に順手に戻したときも、2人のやり取りは「いつかは戻した方がいいんですよね?」「いずれは戻した方がいいんじゃないかな。それが本来のスタイルだからね」といった具合。ここでも戻すタイミングは本人が決めたという。
目標とする米ツアー参戦となれば、コーチが全試合フル帯同することは難しい。自分で考え、課題に対処しなければならない局面は、必ず出てくる。
「自分が『こう』と思ってやりたいことをやっていかないと、絶対に後悔も残ります。後悔しないゴルフ人生を送ることが、一番大事。その上で結果が出ることが最高。僕を含め、渋野日向子という選手を下で支えるチームは、その手助けをしていく。2カ月間、頭も体も使い続けてきつかったと思います。でも、得るものはたくさんあったはずです」。チーム一丸で復帰を控える国内ツアー、さらには12月のメジャー「全米女子オープン」を見据えている。
■「任せっきり」食事面も実は…
米参戦の予行演習ともいうべき2カ月間。コロナ禍で米国内の多くの飲食店がテイクアウト中心の営業に切り替わる中、渡米後の7週間近い期間で渋野がテイクアウトを利用した回数は片手で数えられる程度。練習する間に田谷美香子マネジャーがコース近くのスーパーマーケットをはしごして食材を調達するなど、自炊生活を支えた。
朝食と夕食に合わせ、炊飯器もフル稼働。ラウンド中には大好きな日本のお菓子だけでなく、おにぎり(本人の希望で米本土4試合とも塩むすび一択!)も食べて乗り切った。「食事に関しては任せっきり。日本食を食べられている」と恐縮していたが、山火事による大気汚染の影響でコースが閉鎖され、外出が難しかった「ポートランドクラシック」開幕前など積極的に料理に挑戦することもあった。
米国でのラスト2試合を前に「自分も、これからゴルフだけで生きていくわけじゃない。ちょっとずつお手伝いとかもやっていって、しっかり“大人にならなきゃな”と思いましたね」と話していた渋野。「(料理にチャレンジして)少しだけ大人になれたかな」と笑いつつ、「お母さんの大変さがわかった」。転戦を支えてくれたすべてのサポートスタッフへの感謝とともに、身近な存在の偉大さを再認識していた。(編集部・亀山泰宏)
亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール
1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。