ひとりでモールに“お祝い”買いに 山下美夢有が吉田優利についた嘘
◇米国女子◇メイバンク選手権 最終日(1日)◇クアラルンプールG&CC(マレーシア)◇6536yd(パー72)
3mのウィニングパットを沈めた直後、18番グリーンにはお決まりの光景が広がった。シーズン3勝目を遂げた山下美夢有を中心に歓喜のウォーターシャワーの輪ができる。すでに汗だくだった白いウェアはさらにびしょ濡れになった。
先週は「BMW女子選手権」で吉田優利が米女子ツアー初優勝を飾った。韓国で雨中の戦いを制し、祝福のシャンパンを浴びた。しかし、山下は以前から同大会の欠場を決めていたため不在で、先輩プロの記念すべき瞬間に立ちえなかったことが、ちょっぴり残念だった。
私も思いを伝えたい。再会できるマレーシアで山下はひそかに行動した。開幕前、宿泊ホテル近くのモールにひとりで出向き、お祝いのケーキを物色したという。「それが、ホールで買いたかったのに、全部“10人前”みたいな大き過ぎるものしかなくて。『これを届けてもなあ』と思って、ちょっとしょうもない感じ(カットケーキ)になっちゃったんです…」。なんだか想像していたのとは違ったけれど、まあしょうがない。
ガッカリしたことがもうひとつ。「本当は(メッセージを)チョコでプレートに書いてほしかったんですよ。でも『きょうはできない。2日かかる』って言われて。『きょう会うから、きょう欲しいねんけど…』と思ったのに」。うーん、こっちもしょうがないから、ケーキが収まった箱に自ら手書きで『優勝おめでとう』と記した。
さて、問題はこれをどう渡そうかである。せっかくだから驚かせたい。「もともと一緒にご飯に行く予定だったので、ケーキを持って部屋に押しかけるのもちょっと違うかなと思って。だから、『前夜祭で着る衣装を決めてくれないですか?』って言って、どうにかして私の部屋に来てもらったんです」。かくして、サプライズは大成功。本来の目的とは異なる“嘘”を真に受け、足を運んだ吉田が「うれしかったですね。実は私たち、仲イイんですよ」と喜んだのは言うまでもない。
国内ツアーで年間女王に2度輝いた山下は、米ツアーに渡って1年目でメジャーを制覇。日本勢としては38年ぶりの大会連覇にも成功した。実績はもう孤高の人のようで、25歳はひとりではない。思いをシェアできる大切な戦友が何人もいる。(マレーシア・クアラルンプール/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。X(旧Twitter): @yktrgw