日本&アジアンツアーで躍進中! コー・タイチとは何者だ?
◇日韓共催◇シンハンドンヘオープン 事前(9日)◇ジャック・ニクラスGC(韓国)◇7502yd(パー72)
国内ツアーで今季、非常に気になる選手がいる。その名はタイチ…と言っても手嶋多一ではない。6月の国内メジャー「BMW 日本ゴルフツアー選手権」で2位に入り、翌週のアジアンツアー「インターナショナルシリーズ モロッコ」で優勝した25歳、コー・タイチ(香港)のことだ。ポイントランクは国内ツアーで27位、アジアンツアーで3位につけている。
2021年「アジアパシフィックアマチュア選手権」(ドバイ)で中島啓太にプレーオフの末に惜敗した長身の若者だ。当時は米国のノートルダム大のエースとして活躍し、自身が入学する前はランキング100位以下と低迷していたゴルフ部をNCAA1部のトップ5へ導いた。生まれは香港、父が中国人、母が日本人、英語、日本語、中国語を操るトリリンガルでもある。大学ではビジネスマーケティングを専攻、文武両道を地で行っている。
そもそもなぜ日本のツアーを選んだのか?「去年、ISPSの日本の試合に2回出場した際に、レベルの高さとフィールドの厚さを実感して、自身のゴルフの上達に繋がると感じて挑戦を決めました。アジアンツアーと比較しても日本のカットラインはシビアでレベルが高いので、自分が成長できる環境だと感じています」。その選択が正しかったことを、試合に出ればでるほど実感しているという。
順調なキャリアに見えるが、今季序盤はスイング面で悲鳴を上げていた。「中日クラウンズで予選落ちをして『もうこのままでは戦えない』と思い、元のスイングに戻す決断をしました。実は2年前に腰を痛めたことをきっかけにスイング変更を試みて、去年はアジアンツアーでトップ10に入るなどの成績は出ていたのですが、ショットメーカーとしてのしっくりくる感覚が得られずにいました」という。
香港のナショナルチーム時代から師事する英国人コーチのジョナサン・ウォレット氏とセッションを繰り返した。「もともと体のセンター1軸で回転して、バックスイングが大きくなりリバース気味になることが多く、それが腰を痛めた原因と考えていました。だから、回転を抑えてバックスイングで右に乗るような動きを取り入れていましたが、どうしてもしっくりこなかった。中日クラウンズの後は、センター軸でしっかり回転する意識に戻しました。まだ完全に定着していませんが、今は安定感を模索している段階です」。それでも、修正直後のツアー選手権、モロッコで結果を残し、大きな自信になった。
もう一つ、彼のプレーにはおもしろいところがある。パッティング前に必ず左袖のシャツをわきに挟む。そのルーティンは、子供の頃に憧れたジャスティン・ローズ(イングランド)がきっかけだ。「自分は左肩が上がるクセがあり、左わきを締めることで両肩の高さが揃うので、胸で回して打つ再現性の高いストロークが意識できます」。後に香港の大会でローズ本人と一緒にプレーする機会もあったが、「恥ずかしくてまともに話をできなかった」と笑う。
ただ、そんなスイング、パッティングの特徴も「数多くある要素の一つに過ぎない」というのが、コー・タイチのスタイルだ。「両者と同等の価値がある」と考える要素が、メンタル。「毎月、自分の考えや状態をコーチと話し合ってアップデートしています」とジョナサン氏とのセッションを欠かさない。具体的には、「自分とゴルフとの『関係性』を見直すことに集中しています。プロになり、ゴルフが仕事になって成績や賞金の面でストレスやプレッシャーを感じることが増えました。その中でもゴルフは『自分を力づけてくれるもの』ととらえ直し、プレッシャーから解放されて自由かつ楽しくプレーできるように取り組んでいます」と語る。
今季の目標は「『毎日、昨日より1%良くする』ということだけ」。賞金王やPGAツアー(米ツアー)のQT挑戦などではないのか。「将来的な最終目標として『PGAツアーに出場してメジャー大会でプレーすること』は当然ありますが、目先のタイトルに固執するのではなく、自分の最高のゴルフができれば優勝や結果はついてくると信じています。アジアンツアーからDPワールドツアーへ出場できるルートができたことも大きな励みになっています」
日々の努力を重ねて、気づけばステージが上がっている。そんな選手がきっと上り詰めていく―。日本人選手が目指す道が見えたような気がした。(韓国・仁川/服部謙二郎)