2026年 リシャール・ミル チャリティトーナメント

余韻 <先週の一枚>フォトグラファー今井暖

2026年 リシャール・ミル チャリティトーナメント 最終日 大西魁斗

当たり前のことだが写真に音は無い。ゴルフに例えるなら、ショットを打つ前と同じくらいの静かな世界がそこには広がっている。一方で、映像には音があふれている。人の会話や自然が作り出す様々な音、鳥の囀りや動物の鳴き声。ほかにも風や街の音、そして人間が発明した音楽も映像を彩る大切な要素だ。音が無いことはある意味、写真の強みでもあるのだが、人間の感性を刺激するにはやはり重要な存在である。

先週の男子ツアー「リシャール・ミル チャリティトーナメント」は昨年に続いて石川県で開催された。会場にはDJブースが設けられ、18番ホールでは賑やかなリズムが最終ホールのグリーンを彩った。北陸の名門コースの空に内臓まで響くビートが刻まれる。それが違和感ではなく、少しずつ日本の歴史あるコースと融合し始めているように感じたのは僕だけではないはずだ。

1番、10番に設定された「ツアーホール賞」という選手にとってはボーナスのような賞金ホールを終えると、最終組のデッドヒートはますます加速していった。選手もギャラリーも我々メディアも予断を許さない一種の「ゾーン」のような状態になり、DJが創り出すイベント会場のような雰囲気は一切、無くなっていた。常に音がある状態から、いつもの無音のバックナインへと最終組が進んでいく。喧騒から静寂へと進むにつれ、おそらく人間の耳の構造上、より一層音を感じやすい状態になっていたはずだ。3人の打音が静けさを取り戻したティイングエリアに響く。いつにも増して心地の良い音だった。

試合展開も手伝ってバックナインは3人の闘いを撮り続けることができた。3人が互いのショットをたたえ合い、グリーン上では言葉を交わさずとも、選手たちの目を見ればこの闘いを楽しんでいることがわかった。そんな彼らの姿は頼もしく、そして清々しかった。試合が終わってしまう寂しさを感じられることが、この時間と空間の濃度を表している。

「いい写真は音が聞こえる」などと評されることがあるが、残念ながらこの写真からまだ音は聞こえてこないかもしれない。でも僕の耳には、あの静寂を切り裂く分厚い打音がまだ心地良く残っている。(フォトグラファー・今井暖)

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