昨季より「しんどかった」 飽くなき探究心で来季へ/山下美夢有インタビュー(前編)
生涯最大の悔しさを味わったメジャー制覇へ パリ五輪も「絶対行きたい!」/山下美夢有インタビュー(後編)
2年続けて日本のトップに立ったことで、山下美夢有の視線は完全に海外メジャーに向き始めた。今年は3試合に出場し、「全米女子オープン」では日本で経験できないようなコースで人生最大の「悔しさ」を味わった。後編では、2024年のメジャー全5試合と8月「パリ五輪」への出場を目標に、“世界一”を目指していく思いに迫る。(聞き手・構成/加藤裕一)
全米女子オープンの衝撃
―昨年はメジャー出場がAIG女子オープン(全英女子)だけやったけど、今年は3試合(全米女子オープン、エビアン選手権、AIG全英女子オープン)に出た。特に心に残っている大会ってある?
「全米女子オープンです」
―国内外で今季唯一の予選落ち
「もうなんか、メジャーで結果を出したいっていうのがあって。それで全米の週に合わせて調整したんですけど、結局それを全然発揮できひんかったんで」
―お父さん(コーチの父・勝臣さん)が実際に現地(ペブルビーチGL)でコースとラフを見て「これは急にできんわと思った」と言うてた。ペブルビーチは衝撃的やったの?
「めっちゃ衝撃的でした。もう日本と全然違うんです。めちゃめちゃ難しい。グリーンがめっちゃ小さいし、日本にないコースっていうか…。(そういうコースを)今まで経験してへんまま、練習ラウンドを2回ぐらいやって、いきなり本番。技術がないからめちゃめちゃ難しく感じました」
―天気も厳しかった
「そうです。寒かったし、コンディションも難しかった。でも、結果が出んかったんは、やっぱり何かが足らんかったからですよ。体調面(の問題)もあったし、難しさに対応できない技術(のなさ)も感じて…。なんかめっちゃ悔しかったです」
―今までそれだけ悔しかったことってある?
「あんなん初めてです。プレーオフ負け(岩井姉妹との3人で岩井千怜に敗れた5月RKB×三井松島レディス)よりも全然悔しかった。比にならんぐらい悔しかったです。普通、場面によって攻めたらいけない時ってあるやないです? そやのに、何も考えんと全部ピンばっかり狙ってしまっていました」
―そういうことって日本ではない?
「日本やったらピン狙って、グリーンを外しても、ほぼほぼボギーとかにならないんで。向こうは“点”で打たんとダメな世界なんやってことを痛感しました」
一気にげっそり…体重2、3kg減
―特に何が足りんかったやろ?
「一番思うんは、もうちょっと体を強化したいってことです」
―(前編で触れていた)“7、8割の力で今のフルショットの距離が出て、球筋も安定させる”目標がそこにつながってくるわけか
「そういうことです。あともう一つ、すごく思ったことがあります。海外って行くだけで長時間移動になるやないですか? それだけでも体力を削られて、体重が落ちてしまって」
―体重が落ちる?
「2、3日の間に2、3kgは落ちました。日本では絶対に朝、昼、晩の3食とるんですけど、向こうでは時差とかもあって(食事が)全然合わんかった。全然食べられへんかったんですよ」
―お父さんが「子どもの頃にええもん食べさせすぎた」と笑って言うてたけど
「(爆笑しながら)それ、ほんまにあると思います」
―でも、日本料理や韓国料理とかいろいろあるでしょ?
「それはそうなんですけど、全くダメで。味が合わへんのです。お母さんもそう言うてたし、うちの家族はみんな(海外の食事は)あかんのかもしれません」
目指すのは米ツアーでなくメジャーの頂点
―来季は新たに稲見萌寧、吉田優利、西郷真央が米ツアーに参戦する。うらやましさや“私も”っていうのは
「うらやましさとかはないです」
―他人(ひと)は他人という感じ?
「うーん、それもありますけど、私の中では(米ツアーというよりも)メジャーで結果を出したいって思いなんで」
―来年のメジャーは? 今年はシェブロン選手権と全米女子プロに出んかったけど
「今年はまだ仕上がってへんかったから(4月の)シェブロンには出ませんでした。来年は資格があったら、全部のメジャーに出たいです。あとパリ五輪も」
パリも五輪も魅力的
―五輪か。ひょっとしてパリっていうのも魅力?
「(爆笑しながら)行きたい!」
―パリに? 五輪に?
「どっちも。パリも。(爆笑しながら)パリでオシャレしてっていうのもやってみたい!」
―五輪っていつから意識したの?
「今年の途中からかなあ。東京五輪の時は全然してませんでした。でも、出られるのが日本を代表する2人とかやし。だから世界ランキングをキープしたい」(12月25日時点で19位。畑岡奈紗に次ぐ日本勢2番手)
―ほなメジャーと五輪、プロにはどっちのタイトルが重い?
「(少し考えて)メジャーです」
―オフはどこで練習するの?
「海外とかには行かんで、日本で、関西のコースや家の近くでやろうと思ってます」
(取材協力/兵庫・六甲国際ゴルフ倶楽部)