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佐藤信人の視点 勝者と敗者

大槻智春の初優勝に見る“苦労と芯の強さ”

国内ツアー「関西オープンゴルフ選手権競技」で初優勝した29歳の大槻智春選手。プレーオフ4ホール目で23歳の星野陸也選手を破りました。試合後に残した「昔からのスイングが駄目だから変えるのではなく、やり続けることが大事」という言葉に、彼の苦労や芯の強さを感じました。

大槻選手と星野選手は最終日、ともに圧巻のプレー。首位と3打差の4位で出た大槻選手は、フェアウェイキープ率92.86%、パーオン率100%と持ち前の安定感で7バーディ、ボギーなしの「65」(パー72)で回りました。一方、同組だった星野選手はフェアウェイキープ率42.86%でしたが、今季ドライビングディスタンス4位の飛距離で9バーディ、ボギーなしの「63」。互いにこの内容で勝ち切れないのか、と思ったはずです。

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2年前下部ツアーの賞金王になったとはいえ、レギュラーツアーで初めて優勝を争った大槻選手にとって、ツアー通算1勝の星野選手は“格上の後輩”。しかもプレーオフは1オンが可能な18番(334d)。周りから見れば、飛ばし屋を相手に厳しい状況です。精神力が試される場面だったと思います。

結果論ですが、1打ビハインドから最終18番のバーディで追いついた大槻選手に流れがありました。星野選手はツアーで初のプレーオフ。試合後「緊張した」と言っていましたが、私もプロ初のプレーオフは、ずっとフワフワしたような緊張感があり、負けた記憶があります。会場の雰囲気にのまれる、という表現でしょうか。星野選手は期待される逸材ですが、若さが影響したのかもしれません。

大槻選手は3mのウィニングパットを決めると、険しかった表情がやっと和らぎました。プロ転向10年目、優勝は格別だったはずです。

彼の名前はジュニアのころから知っていました。当時、プロコーチの井上透さんから「小平智はすごい、大槻もうまい」と聞きました。大槻選手と同学年の小平選手はその後数年で活躍し始めましたが、大槻選手はなかなか表舞台に出てきませんでした。

振り返れば、彼はこの時期にスイングなどをいじらずに、地道に努力を続けたのが良かったのでしょう。実績のあるアマチュアがプロになって壁に当たると、技術面に原因を求めてスイング改造をする、というのが多いパターンです。もちろん奏功する場合もありますが、それが原因でさらに崩れるということもあります。

結果を残せないと気持ち的にも難しさがあります。特に小平選手の活躍にも嬉しさと同時に悔しさもあったでしょう。何も変えないことは多くの方が思う以上に勇気のあることなのです。彼が優勝後に話した「何かひとつのことをやり続けることが、強さと自信につながると思う」という言葉にすべてが凝縮されているように感じます。

葛藤や迷いを乗り越えたからこそ、彼にはいまがあるのです。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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