ツアープレーヤーたちの人気者<石川遼>
2008/12/15 09:31
17歳にかかれば、ベテラン記者もかたなしだ。今月8日に、都内のANAインターコンチネンタルホテル東京で行われたジャパンゴルフツアー表彰式。最優秀新人賞と、ファンが選んだもっとも印象に残る選手の「MIP賞」と、記者のみなさんが選ぶ「ゴルフ記者賞」の3冠を受賞した石川遼が、式典のあとで行われた記者会見の最後にすっくと立ち上がった。当機構(社団法人日本ゴルフツアー機構)会長の小泉直が、いつも感心するのは石川の感謝する姿勢だ。「彼はスピーチで、必ず家族や関係者、ファンへのお礼を忘れない。しかも、17歳でそれを実践できることが素晴らしいし、だからこそこれだけ大勢の人の心を引きつける」と、常々話しているが今年の締めの挨拶でこそ忘れなかった。
最終日の視聴率が2000年以降最高の14.6%(関東地区、ビデオリサーチ)を記録したツアー最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」。年間のギャラリー数は前年比で23.24%増の52万人。7年ぶりに、50万人を突破した。17歳の活躍はゴルフ界の枠をはるかに越えて、まさに社会現象までになったが「それはすべて、みなさんから始まったんです」と、石川は切り出した。男子ツアーは各局のニュースでも取り上げられ、特に終盤戦は毎週のように新聞の一面を飾った。「これだけ注目していただけるようになったのは、みなさんが書いてくださったからこそ。僕だけの力ではありません」と頭を下げて、しみじみとした空気がその場に広がった。
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と、そのときだった。石川がさらに続けたのだ。「僕も、これからもますますゴルフが上達するように頑張りますので、みなさんのペンも上達していっていただけるように…」。そこまで聞くなり、場内からゲラゲラと笑いが巻き起こった。中にはベテランの記者の方もいらして、思わず苦笑……!! お隣同士、ヒソヒソと「おい、俺たちも磨かなくちゃなあ!」「うん、ほんとそうだよなぁ~」などと、肩をたたき合う方々もいて場が和む中「これからも一緒に頑張っていきましょう」と、締めてまたもやあっぱれ…!! さらなる笑いを引き起こしたのだった。
ひょっとしたらそんな台詞も、他の選手だったら生意気に聞こえたのかもしれない。そうはならないのはやはり、先にも言ったように石川が、日頃から周囲への感謝の気持ちを忘れず、またそれを積極的に口に出して言っているからだろう。それにことゴルフに関して石川が誰よりも努力をし、また予想を超える結果を叩きだしていることは、言うまでもないことで、そんな驚異の17歳に「互いに自分の専門分野を磨いていきましょう」と言われても、共感こそすれ不快になることはまずないだろう。
会う人の気持ちをたちまち掴んでしまうようなところが石川にはある。先週のシニアと女子と男子の対抗戦「日立3ツアーズ選手権」の最終マッチで、その石川と女王・古閑美保選手と対戦した中嶋常幸も何かと石川びいきだった。「中嶋さんは女の子が好きだったはずじゃないんですか」と古閑がふくれると、「いや、古閑ちゃんよりも僕は遼くんだな~」と言って笑わせたし、先の表彰式のあとに行われた懇親会で、石川とトークショーを繰り広げた青木功も石川をベタ褒めだった。
以前、石川の手が荒れていたのを見つけた青木は、「ゴルファーにとって、手先は命だ。こまめにハンドクリームを塗らなきゃだめだ」とアドバイスしたことがあったそうで、「遼くんは僕が言ったことを、すぐに実践していたんだ。人の意見をすぐに取り入れる素直さが、彼の急成長の鍵なんだと思う」と話した。すると、すかさず石川が答えた。「青木さん、実は僕、お母さんからもハンドクリームを塗りなさいって言われていたんです。でも、お母さんに言われることはすぐに忘れてしまって…。全然言うことを聞かなかったけど、青木さんから言われたら『すぐにやらなきゃ!』って気になって(笑)。絶対に忘れないでやるようになりました」。これには青木もすっかり眉尻を下げて「ハッハッハッハ」と、大笑い。司会の岩瀬恵子アナウンサーが会話を引き継ぎ「じゃあこれから遼くんのお母さんは、何か遼くんに言いたいことがあったら全部、青木さんにお願いしたらいいですね」と、振ってますますゴキゲンだった。
石川遼に始まり、石川遼に終った2008年。17歳の活躍に他の選手たちも引っ張られるようなかっこうで、ますます盛り上がりを見せたジャパンゴルフツアー。来年は、またどんな話題を振りまいてくれるだろうか。幕が下りるなり、次の開幕までみんなが待ちきれない気持ちになる…。こんなにシーズンは本当に久しぶりではないだろうか。