ツアープレーヤーたちのサービス精神<杉原輝雄>
2008/09/22 09:41
注目の組み合わせ、というのがある。たとえば、尾崎3兄弟の同組ラウンド。または青木功、ジャンボ尾崎、中嶋常幸のいわゆる“AON”の直接対決・・・。そんなとき、選手を追うカメラマンたちは、ぜひ3人とも同じフレームに収めたいと考える。
しかし、そうそう上手くはいかない。偶然、一所に集まったときを狙ってカメラを向けても、誰か一人が背中を向けていたり、じっとうつむいたままだったり・・・。18ホールついて歩いてもけっきょく良いシーンが撮れずに徒労に終ったりする。あえて3人、お互いにくっつかないでおこうと相談しているのかと疑いたくなるほどだ(もちろん、そんなはずはないのだが)。
だから、そんなカメラマンたちの気持ちを大いに察し、そちらのほうからベストショットを作ってくれようとする選手には思いのほか人気が集まる。その一人が杉原輝雄である。
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御年71歳。しかし関西のドンは大ベテランの矜持はつゆほども見せず、ツアーを盛り上げるためならばと、自ら道化を演じてみせるのだ。
今週開幕の新規トーナメント「アジアパシフィックパナソニックオープン」は、8月に報道陣向けの事前のコース下見のラウンドと記者会見が行われたが、その際にも底知れぬサービス精神を見せたものだ。
開催コースの大阪府・茨木カンツリー倶楽部は、ここでゴルフを覚えた杉原にとってはホームコースのようなもの。コースの“顔”として参加した杉原に同行したのは選手会長の宮本勝昌と、大会主催のパナソニック所属の石川遼。
特に石川とは初の同組ラウンドで、報道陣の注目が集まっていた。16歳を相手にドンがどんな表情を見せるのか・・・。そんな期待を察しスタート前の練習場でさりげなく石川の背後に立ち、いざスタート後もあれやこれやと石川に他愛ないことを話しかけ、写真が撮りやすい位置に自らを置く。
そればかりかその途中には、顔見知りのカメラマンのもとに寄ってきてそっと耳打ち。「もうこのくらいで大丈夫か?」。つまり「僕と遼クンの2ショット写真は十分に撮れたか」と、心配して聞いている。さらには「ほかにやっとくことあるか?」と、重ねて尋ねる親切さだ。
嬉しい申し出に、思案していたカメラマンは最後のお願い。「宮本選手と遼クンに肩揉んでもらってもいいですか?」。「もちろんかまへんよ(構わないよという意味の関西弁)」と、二つ返事で頷いたドンは、ティインググラウンド横にあったベンチに腰掛けて「どんなポーズがいい?」と言いながら、2人を背後にはべらせて、すっかり好々爺の表情を浮かべてみせた。
そんな姿勢は今に始まったことではない。しかも“身内”よりむしろ、ギャラリーに対するほうがよりいっそう顕著である。ラウンド中も積極的に声をかけて歩く。だから杉原の行くところに笑いが絶えない。そのくせいざ試合になると、史上最年長予選通過と史上初のエージシュートを狙う勝負師の鋭い眼光とゴルフに対する真摯な思いを垣間見せ、「杉原さんに勇気と元気をもらった」と、感激して帰っていくファンは多い。
今週はいよいよ、その「アジアパシフィックパナソニックオープン」だ。“生まれ故郷”でまたどんなパフォーマンスを見せてくれるか。ドン目当てのファンが、今週も大勢駆けつけそうである。