ツアープレーヤーたちのマイブーム<中嶋常幸>
2008/06/23 09:09
ある日、大切な伝達事項があって、ツアーのスタッフが電話をかけたときのことだった。受話器の向こうの声が、普段以上に弾んでいる。しかもその背後ではスタッフにも聞き覚えのある音楽がにぎやかに鳴り響いていた。「ずいぶん楽しそうな音がしていますけど、どこにいらっしゃるんですか」と尋ねたところ、ますますはしゃいだ声が返ってきた。「そうなんだよ~! 実はいま、愛ちゃんとディズニーランドに来ているんだっ!!」。
“愛ちゃん”とは言わずと知れた、中嶋常幸の初孫のことだ。ここ数年はレギュラーとシニアを股にかけ、出場試合数を厳選し、いずれのツアーでも出来うる限り万全の体勢で臨めるように心がけている。オフは体力強化に努める日々の息抜きとして、目下お気に入りの場所のひとつが東京ディズニーランドなのだという。夢と魔法の王国では、大人も子供も同じ夢を見る。このときばかりは、みな童心に返るおとぎの国で、53歳も孫と一緒に思う存分、羽を伸ばすのだ。
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孫と無邪気に戯れる一方で、プロゴルファーとしての視線も忘れない。男子ツアーで参考にしたいのは、ディズニーランド的テーマパークのあり方だ。来てくださった方に心から楽しんで帰ってもらおうというもてなしの心が、いまもっともトーナメント運営に必要な姿勢だと、ある会議で力説していたこともあるという。実際にツアーのプロアマ戦では誰よりも熱心にアマチュアの指導に当たり、サービス精神旺盛なところを見せるのは、そんな意外な場所にルーツがあるのかもしれない。
そんな「じぃじ」と愛ちゃんが、いまもっともハマっているアトラクションが、東京ディズニーランドのお隣、ディズニーシーの「マーメイドラグーン」だ。「愛ちゃんはアリエルが大好きなんだよ」と、映画リトル・マーメイドの主人公の名前がサラっと出てくるあたり…。かなりの通!?「そうだねえ…もう数え切れないほど行ってるからね」との自慢もうなずけるほど。ディズニーランドについて、語り始めると止まらない。あげくの果てには、名物のエレクトリカルパレードのテーマ曲を口ずさみながら腰のあたりに手を当てて、クルクルと踊り出す始末だ。
それにしても、だ。あれほど大勢の人が集まる場所で、“トミー中嶋”がそれほど頻繁に姿を見せたら毎回、けっこうな騒ぎになるのではないか? 中嶋は上背もあり、人混みの中でもかなり目立つだろう。そんな疑問をぶつけてみたが、シレっとして答えた。「ぜ~んぜんっ大丈夫だよ。だって、あそこでみんなの注目を集めるのは“服を着たネズミさん”だけだからね」。
ハイ確かに、ごもっともでございます…。