ツアープレーヤーたちの大失敗<前粟蔵俊太>
2008/06/09 09:19
ホっと胸を撫で下ろしたのは、先週の「三菱ダイヤモンドカップ」の最終日だ。「おかげさまで、やっと手にすることができました」と言って、大きな目をクリクリと動かした。昨年12月のプロ転向以来、自身2度目の予選通過もこれがようやくツアー初賞金だ。
いきなりプロの洗礼を浴びたのは5月、デビューから2戦目の中日クラウンズだった。難攻不落の和合でツアー初の予選通過を果たし、喜んでいたのもつかの間だった。最終日は72でホールアウト。通算6オーバーでスコアを提出し、アテスト会場を出たところでスタッフに呼び止められた。
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15番ホールで実際は「6」のところを、スコアカードに「5」と記入していることを知らされて、たちまち青ざめた。マーカーともきちんと読み合わせをしたはずだったが、うっかり聞き間違えたのか…。過少申告で失格。「4日間プレーした意味もなくなって、むしろマイナス…」。しかも、帳消しになったのはスコアだけではない。記念すべきツアーでの初賞金も水の泡と消えて、茫然自失だ。「あれは、さすがにショックで。帰り道もしばらくぼーっとしたままでした」と、振り返る。
プロ転向を機に「最初から最後まで、一人でやってみたい」と自立を目指す18歳は現在、東京で一人暮らしだ。当面の生活費を前借りしているが、どんなに切り詰めても「いつのまにか、貯金通帳からお金がなくなっているんですよ」と、苦笑いで首をかしげる。光熱費、水道代もバカにならず「とにかく、1銭も無駄にできない立場で失格なんて…。しかもよりによって最終日でしょう? あれは本当に痛かった」と、ため息交じりにつぶやいた。
それだけに、やっとの思いで手にした初賞金の使い道は「もちろん、貯金です!」との即答が返ってきた。「これからは、1円たりとも無駄遣いはしません!」との10代らしからぬ(?)堅実ぶりも、高い授業料を払ったからこそ。あれ以来「ゴルフよりも緊張する瞬間になった」というアテストは、今では何度も何度も見直した上に、周囲のスタッフに「これでいいですかね」と確認してまわる念の入れようだ。ツアーから厳重注意を受けた痛恨のミスも「早いうちに経験できたからよかった」と前向きに、「絶対に二の舞は踏みません!」と決意も新たにした前粟蔵が、石川遼とともに世界ジュニアの代表メンバーとして、渡米したのは昨夏のこと。
あれから1年もたたないうちに、それぞれプロの道を歩き出した2人だが、シード選手の石川に対し、昨年末の出場優先順位を決めるファイナルQTで予選落ちした前粟蔵は、今年は大会独自の予選会や主催者推薦での出場に頼るしかない。スタートラインこそ差がついたが、どちらも次世代を担うスター候補であることに違いはない。これから先も、お互いにさまざまな苦難もあろうが、どんな逆境も乗り越えて、2人とも今の明るく素直な性格のまま、スクスクと育ってくれることを願うばかりである。