ツアープレーヤーたちの飛距離指南<小田孔明>
2009/04/06 11:11
今回は、誰もが気になる“飛距離”のお話。「どうすれば飛ぶようになりますか」とは、プロのレッスン会やトークショーの質問コーナーで、マチュアのみなさんからかなりの確率で出てくるクエスチョンだろう。
しかし質問者が満足出来たり、実際に成果を感じられたりするような答えは、これまたかなり高い確率で、返ってきたためしがないのではないだろうか。
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「当たり前ですよ。だって、満足いくような答えなんか、ないんですもん。むしろ、僕なら“今さらもう遅いんですよ”と、言いたいくらいです」と、ぴしゃりと言うのはツアーきっての飛ばし屋、小田孔明だ。
昨年のドライビングディスタンスはわずか0.27ヤード差で、津曲泰弦に1位の座を譲ったがその実力とともに、飛距離でも一目置かれている小田は、プロ仲間からもよくそういう質問を受けるのだという。
そのたびに、小田はこう答えるようにしている。
「飛距離はクラブやボールで補うことにして、アイアンショットや小技の精度を上げるほうに力を入れたらどうか」。
まずはそう勧めてみるのだが「お前は出し惜しみしている」と責められたり、諦めきれないプロには「そこをなんとか」と食い下がられて、困ってしまうこともしばしばという。
身長176センチ、体重85キロの屈強な体を羨ましがられることも多い。しかし、小田はこれについても「体が大きいからといって、必ずしも飛ぶわけではない」と、否定する。
「もちろん、有利な面は多いかもしれませんけれど、実際は身長が高くてもまったく飛ばない人もいるし、体が小さくても凄く飛ばす人もいるじゃないですか」とは、確かにおっしゃるとおりである。
小田によると、飛ぶ・飛ばないはその人が、最初にクラブを握ったときにほぼ決まってしまうのだという。つまり、確実にフェアウェイに置いて、というようなステディなプレーを目指すか。
それとも「俺は、何がなんでもまずは飛距離だ」というようなスタイルを選ぶのか。
その人が、最初に何を求めてゴルフを始めるかで「運命が決まる」というのだ。
「だから、プロになって飛ばし屋と言われる人たちはみな、幼いころに徹底的に飛ばすスイングを教え込まれた選手たちなんです」と、小田はいう。
たとえば、小田が「ご近所のよしみ」でよく一緒にトレーニングさせてもらっているという伊澤利光が良い例だという。伊澤は、身長169センチと決して大きいほうでない。しかしそれでもよく飛ばすのは、伊澤が子供のころからお父さんの利夫さんに、飛ばすスイングをたたき込まれてきたからだというのだ。
また、最近で言うならやはり石川遼だ。子供のころに、小さくまとまったスイングを覚えてしまうと、一度ついてしまったクセは、大人になってからでは変えることはほとんど困難なのだと小田はいう。
「そのことを、石川遼くんのお父さんはよく分かっておられたのでしょう。もちろん、遼くんのほうにもお父さんの教えを体現できる高い身体能力があったからこそだと思いますが、息子の才能を早くから見抜き、一貫して方針を曲げなかった。その点でも、ほんとうに素晴らしいお父さんだと僕は思いますね」。
得意分野の飛距離について、そんな持論を展開する小田に「では、これから子供にゴルフを教える親は、具体的にどんな指導をしていけばいいのか」と尋ねてみたら、今度はたちまち口ごもってしまった。
「それは、その……。僕には上手に説明できなくて」と、頭を掻いた。
「これはもう、まさにミスター(擬音語を多用することで有名な長嶋茂雄・読売巨人名誉監督)の世界で、“ここでこうバーンとクラブを返すんだ”というような表現しか僕には出来ないので、よく他のプロにも“お前の説明はよく分からん”と呆れられます。これでは、とても良い指導者にはなれそうにありませんね」と、苦笑した。
それでも未来のプロゴルファーたちに、ただひとつ明確に伝えられることがあるとすれば、「300ヤードではなく400ヤード飛ばすつもりで頑張れ、かな」と小田。
「僕もそうですが、子供のころから400ヤードが目標だったから、今は普通に打っても300ヤードは軽く飛ぶ。でも最初から300ヤードを目標にしていたら、きっと200ヤードしか飛ばなかったと思うんです。これは何にでも言えることだと思いますが、目標を大きく持つことで、より高い次元を目指していけるということではないでしょうか」。
というわけで、今年の小田の目標は、ズバリ「賞金王」だ。飛距離でも、夢でも、なんでもデッカイことはいいことなのダ……!?