ツアープレーヤーたちのこだわり<増田伸洋>
2009/05/25 09:00
17歳にはまだまだ負けん、と石川遼に対抗心を燃やす30代、40代の選手たち。そんな“オヤジ世代”の強みはやはり結婚、出産(といってもこれは本人たちがするわけではないのだが)を経て、自らも親となり、家族を持つという人生経験ではないだろうか。
今年43歳を迎えた鈴木亨は芸能界で奮闘する愛娘・愛理ちゃんの活躍と、そんな両親の苦労を気遣いつつ、父親にハッパをかけてくれる長男・貴之くんの存在が何よりの励みだし、先の中日クラウンズで復活優勝を飾った36歳の平塚哲二は長男・仁くんの応援に、「子供が見ている前で恥ずかしいことは出来ない」と発奮。みごとツアー通算5勝目を引き寄せた。
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子煩悩な選手ほど、子供の存在が間違いなくゴルフへの原動力になる。プロ12年目、今年36歳の増田伸洋は、二児の父。シーズンが始まれば当然、家を空けることが多くなるが、それでも週に一度は可愛い子供たちの顔を見なければどうにも気が済まない。だから、1試合が終わるごとに必ず一度、千葉の自宅に帰る。それは、どこへ“出張”している週でも絶対に、だ。
頑固なまでのこだわりように周囲も驚いたのが、なんといっても昨年7月だった。
「長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップ」と「サン・クロレラ クラシック」の2大会は、2週続きで北海道で行われたトーナメントだ。うだる暑さの本土に比べ、絶好の行楽シーズン。普通なら2週間、そのまま札幌に居座るのが当然の成り行きだろう。交通費と移動の手間を考えれば誰でもそう考える。日曜に前週の大会を終えて、練習日の火曜から次の会場に入るスケジュールならば、たった1日だけのために、家に帰ろうという選手はまずいない。
しかし、増田は帰った。「いや、子供たちのためにもなんとしても帰らねば、という気持ちだった」という。そして月曜日はいつものように、長男・康輔くんを小学校に送り出し、長女・沙姫ちゃんを幼稚園まで送り届け、夕方は沙姫ちゃんを迎えに行き、康輔くんを玄関で出迎えた。父親のつとめをきっちり果たして連戦の疲れをリセット。翌火曜に「パパ、行ってらっしゃい。頑張ってね!」と可愛らしい声に送り出され、再び闘志に火をつけて北海道に舞い戻ったのだった。
「子供が生き甲斐です」という増田は小学6年のとき、母・八千代さんを病気で亡くしている。まず家族あってのゴルフという精神は、以来、男手ひとつで育ててくれた父・一仁さんの背中を見て育った環境も、少なからず影響しているのだろう。
今年は開幕から、これまで3戦ともみな30代のチャンピオンだ。良き家庭人を中心に、ジャパンゴルフツアーはこれからますます盛り上がる!