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<小田孔明のように、泣けてしまうほどの夢や目標がある?>

今季、初シード入りを決めている河野祐輝がしみじみと言った。「孔明さんは、本当にイイ人なんです」。このオフは宮崎合宿に合流させてもらうなど、何かと世話になってきた。シーズン中も、練習ラウンドで一緒によく回らせてもらうようになり、そのたびにその印象が強くなっていったという。

さらに先週の「ABCチャンピオンシップ」では予選ラウンドで回った。試合では初の同組ラウンドで確信したのは「孔明さんは、どんなときも明るく笑っているイメージしかない」ということ。

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たとえミスをした後でも同じで、「特にふて腐れるわけでもなく、いつも楽しそうにゴルフをしていて」。そればかりか、後輩の自分にも気を遣ってくれたり「練習ラウンドと同じで、僕も凄く雰囲気の良い中で回らせてもらえた」と、現在賞金ランク2位につける先輩の好調の要因を、垣間見た気がした。

いつも笑顔の孔明が泣いたのが、先月の「日本オープン」だった。しかも、大会はまだ3日目なのに泣いたので、周囲は本当に驚いた。「本当に勝ちたい試合だったので。そう思うたびに、な~んかね・・・泣けて来ちゃって」と、あとで本人も照れくさそうに笑ったものだ。

昨年と2007年と、過去2度あった絶好のチャンスを逃した経緯も戦う前から泣けてしまったひとつの要因になったそうだ。そんな孔明をして、戦う前から入れ込みすぎたと揶揄する人もいた。泣いた時点で孔明の負けは決まっていたと言った人も。

確かに、それもひとつの敗因になったかもしれない。それは否定しないけれども、では世間の人々は、ただそれを願っただけで泣いてしまうほどの夢や野望を抱ける瞬間を、人生の中にどれだけ持てるというのだろう。

「泣くな、孔明」と言うのは簡単だが、それだけ熱い気持ちを持って目標に立ち向かっていった孔明に、外野が何を言えるだろうかという気がする。それほどまでに純真に、夢を追いかけていける小田が羨ましい気もする。

小林正則に初タイトルを譲った翌週は、「もう、忘れた! どうでもいい」と、カラカラと笑っていた小田だったが、今度は自分を応援してくれた人たちのことを思ってまた、少し声が湿った。「親しい人たちは、みんな“また次があるよ”と言ってくれて」と涙声で、「でも、この悔しさをまた次に生かせればいいと思うんスよ。また必ずチャンスは来る。そう思って頑張りますよ」。

恋い焦がれる日本タイトルを思って再び赤くした目を隠すように、クルリと向けた大きな背中が、なんだかやけに格好良く見えた。

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