鈴木愛が19位に浮上 畑岡4位 渋野は15位/女子世界ランク
2019年 TOTOジャパンクラシック
期間:11/08〜11/10 場所:瀬田ゴルフコース北コース(滋賀)
「もはや米ツアーではない」米LPGAのアジア戦略
鈴木愛の完全優勝で幕を閉じた今年の「TOTOジャパンクラシック」の期間中、米LPGAでアジア地域のビジネスを統括するショーン・ピョン氏にインタビューする機会を得た。今年、米女子ツアーは世界12の国と地域で計32試合(ソルハイムカップを除く)を開催する。「我々はもはや米ツアーではない。世界ツアーです」という彼らは、アジア、そして日本をいったいどう見ているのだろうか?
――まずは「TOTOジャパンクラシック」について。4試合あるアジアスイングで唯一の3日間大会、そして賞金総額も最少ですが、どう捉えていますか?
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この試合は今年で44回目(第1回大会は1973年。73年から75年までは米ツアーの非公式競技で76年から公式競技となった)ですが、重要でない試合はこんなに長く続きません。毎年、この試合に来るのを楽しみにしている選手もいるし、選手たちのハートに近い試合のひとつです。
確かに、開催期間や賞金総額については主催者と話しているところです(※大会主催者も日米ツアー双方から4日間化への要望を聞いており、2021年シーズン以降に変更する可能性があることを認めている)。もちろん、LPGAにとっては4日間大会がスタンダードで、賞金も高い方がいい。ただ、すべての試合にはゴールがあります。タイトルスポンサーが現状に満足しているならば、我々はそれでOKです。
いま、アメリカでは「ショップライト(LPGAクラシックby Acer)」と「ウォルマート(NW アーカンソー選手権)」が3日間大会です。両者はともにスーパーマーケットチェーンで、彼らにとっては誰が優勝するかよりも、自身の顧客や従業員、取引先を喜ばせることが一番です。彼らにとっては、顧客と質の高い時間を過ごす絶好の機会であり、試合を4日間やるよりも、2日間プロアマをやる方がいい。結局、誰が小切手を切るのかという問題です。スポーツイベントはスポンサーがすべてということはないですが、彼らがいないと実現できないこともまた事実。彼らを尊敬することを忘れないでおきたいです。
――LPGAにとってアジアはどういう位置付けですか?
とても重要です。それは私が語るまでもなく、大会やスポンサーなどのビジネス・ポートフォリオも、アジアマーケットで満たされています。アジア出身選手も多いです。LPGAは6年前、韓国・ソウルに初めてのアジアオフィスを設立しました。わたしはそこの支社長もやっていますが、とても誇りに思っています。現在のオフィスは、韓国、日本、中国などのビジネスをみるのに便利ですが、まもなくタイ、ベトナム、マレーシアなど東南アジアを管轄する新オフィスを同地域に作る予定です。
――米ツアーでは5年連続して韓国人選手が新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)に輝きました。なぜ、韓国人選手は簡単に米ツアーに適応しているのでしょう?
誰にとっても簡単かどうかはわかりませんが、ひとつ言えるのは、米ツアーに来る韓国ツアー出身選手は、間違いなくベストプレーヤーだということです。チョン・インジやイ・ジョンウン6など、韓国ツアーを支配した選手たちは勝ち方を知っているし、もはやルーキーではない。彼女たちはアメリカでも日本でも活躍できると思います。
それに、いまは米ツアーに20人以上の韓国人選手がいて、システムが出来上がっています。海外に出ると、文化、言葉、食事が大きな壁になりますが、彼女たちにとっては言葉の壁も低く、どこでご飯を食べたらいいとか、どこに行ったらいいというのがわかります。米ツアーに日本人選手が増えれば、日本人選手たちもより良いパフォーマンスが出せるでしょう。畑岡奈紗の存在が示しているように、すでにそれが起き始めています。
――渋野日向子が「全英女子オープン」を制したことは、どんなインパクトがありましたか?
とても多くのファンを生み出しました。(全英以来の米ツアー出場だった)台湾でも彼女が一番多くのファンを引き連れた選手の1人でした。それに日本メディアも30人近く来ました。宮里藍が米ツアーに来たときのことを思い出しました。彼女はいまも我々にとって良き友達ですし、ロールモデルにもなっています。いつか、渋野も米ツアーに来て欲しい。日本のスーパースターが世界を席巻する姿を見たいですし、彼女はそうなれる選手だと思います。
LPGAにとって最大のインパクトは、渋野だけが米ツアーでプレーしている日本人ではないけれど、日本のメディアとファンの注目を作り出したことです。渋野はいつも笑顔を見せている。それは、女子ゴルフにとって素晴らしいことです。もし彼女が米ツアーに来てくれたら、私のビジネスはもっと楽になりますね(笑)
――今後、日本ツアーとの連携はどう考えていますか?
より緊密に働くことを望んでいますが、最大の挑戦はお互いに日程が過密だということです。日本ツアーは年間39試合、われわれも32試合を開催していて、移動なども考えると、これ以上試合を増やすことは難しいです。あまり試合を詰め込み過ぎると、試合を休む選手が出てきてメリットがありません。われわれは4週間試合があって、1週間オフを挟むくらいのペースが理想だと思っています。既存スポンサーを尊重しているので、日程を変えたりもしたくないです。
JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)とは、将来的により大きなことを考えましょうと話をしていますが、具体的な案は出ていません。日本ツアーは世界トップレベルのツアーですので、賞金ランキング上位3位に入るような選手は米ツアーでも活躍できると思います。お互いが望むのであれば、将来的には上位選手にLPGAの出場資格を付与するようなことも考えられるかも知れません。
ただし、その決断は選手がすることです。われわれは「米ツアーが世界最高のツアーであるか?」という調査を続けていますが、渋野のような選手が来るのであれば、それが新たな証明となります。日本ツアーも素晴らしいですが、米ツアーは世界一のツアーとして認識されたい。そして、世界トップレベルの選手ならば、ぜひ米ツアーに来てもらいたいです。
一方で、われわれは来年以降にQシリーズやシメトラツアーの仕組みを、追加・変更しようとしています。インターナショナルQシリーズのような仕組みや、いまは下部シメトラツアーから10人がLPGAツアーに上がっていますが、それを拡大することになると思います。まだ詳細は言えませんが、この1、2年以内にいわゆる“インターナショナルパイプライン”を強化していく考えです。(聞き手・編集部/今岡涼太)