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2021年 全米女子オープン
期間:06/03〜06/06 場所:オリンピッククラブ(レイクコース)(カリフォルニア州)

期待も国籍も越えて、ゴルフを好きなままでいたい/笹生優花独占インタビュー

19歳のチャンピオンは、食事中はわずかな会話に参加しただけで寡黙だった。だが、取材の段になると、自ら車まで走っていき、無造作に優勝カップを持ってきてくれた。本物のトロフィーで、しばらくは笹生本人が預かっていて良いのだという。

「でも、荷物になるからあす返そうと思っています。USGAの人たちが、もう(全米オープンが行われる)トーリーパインズにいるそうなので」

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あとから、台座に名前の彫られたレプリカが送られてくる手はずになっている。

◆ ゴルフを好きなままでいたい

8歳のときに妹、弟と3人で始めたゴルフは、18歳でJLPGAのプロテストに合格し、19歳で「全米女子オープン」制覇の栄冠までたどり着いた。両足に重りをつけたトレーニングや、早熟な才能に対する周囲の期待。そんなストレスと折り合いをつけたのは、15、16歳の頃だという。

ポーラ・クリーマーさんとか、宮里藍さん、石川遼さんをテレビで観ると、ぜんぜんつらい顔をしていないし、すごくうれしそうにやっている。『あー、この人たちはたぶん、人に何を言われようと、自分が好きなゴルフをしていて幸せなんだな。自分もそうなりたいな』って思ったのがきっかけです。マキロイもそう。ゴルフをやるために、自分の仕事がうまくいくために、トレーニングをしなくちゃいけないし、練習をしなくちゃいけない。でも、それをつらいって思ったら結果にはつながらないって自分は思う。だから、トレーニングもするし、練習もするけれど、それを楽しみながらやっていきたいって思っています。

(全米優勝は)すごくうれしいですよ。夢の1つだったのでうれしいけど、なんだろう、すごく優勝にこだわっていたとは言いたくないんです。優勝したことはすごくうれしいし、やっと優勝したんだなっていう気持ちはあります。でも、自分はゴルフを好きでやっているから、苦しみがあったとか、すごく努力をしたとか、そういうのをあまり言いたくないんです。

思うように結果が出ないときも、あまり自分を責めたことがなくて…。でも、やっぱりお父さんや他の人から結果を求められることが多かったけど、それを自分はいっぱい聞いているので、自分を責めなくなったのかもしれないです。言われるけど、聞き流しているっていう感じです。

好きなゴルフで自分にプレッシャーをかけて、自分で自分を責めたら、『なんでそれをやっているんだろう?』って思うじゃないですか。好きでゴルフを始めたのに、勝ちとかそんなのにこだわり過ぎて、自分を責めたくないし、ゴルフを嫌いになりたくなかったんですよ。ゴルフを好きなままでいたくて。結果が良くても悪くても、幸せならいいって最近もずっと思っています」

メジャー大会優勝だけでなく、世界ランク1位からシード権獲得まで、ゴルフ界にはさまざまな結果に紐づく指標があり、それを目標に掲げる選手も少なくない。だが、笹生はそういった外部の指標より、“自分がどう感じるか?”を重要視しているのだ。

「上手くいかなくて、クラブを握りたくないっていうときもありますが、そういうときは休みます。ゴルフから距離を置いて、自分のこと、ゴルフのことを見直して、またゴルフに入っていく。休むことなくゴルフばかりしていると、たまにtoo muchになっちゃうので。

(世界ランク1位や賞金1位は)もちろんなれたら、すごくうれしいです。でも、それだけを見て、もしそうなったとしてうれしいのかなって思います。だって、自分がうれしい気持ちで練習して、幸せな気持ちでトレーニングして、試合に出て勝つから、そういううれしい気持ちが出てくると思う。つらい、大変だなっていう気持ちを持ちながら試合に出て勝ったとしても、うれしいのかなって思います。もっと軽い気持ちというか、楽しんで、自分が幸せになるようにしていきたいです」

◆ フィリピンと日本 どっちか選ぶのは自分もつらい

父が日本人で、母はフィリピン人。19歳の笹生には2つの国籍がある。笹生に日本人とフィリピン人の血が流れ、両国の背景を持っていることは紛れのない事実である。日本の国籍法では、重国籍者は22歳に達するまでに国籍選択をする必要があるとされているが、期限までに選択しなければ、日本国籍を選択したと見なされる。その一方でフィリピンは二重国籍を認めている。国籍は1つだけという考え方は、現代社会では時代遅れなのだろうか?

プライベートで、デリケートな国籍というテーマについて、笹生は慎重に、それでいてきっぱりと、自身の考えを話し始めた。

「すごく応援してくださっている方々が多くて、自分でもびっくりです。アマチュアのときはサントリーの試合に出て経験はあったけど、プロになって本当にギャラリーが入ってくるのも(今回が)初めてに近いくらいでしたし、応援してくれる方々もアマチュアのときよりすごく増えたので、とてもありがたいと思っています。

でも、みなさんが優花に期待することに対していろんな声を掛けてくれるけど、それは、優花の頭には入ってきていません。期待に応えられないとかじゃなくて、なんだろう、『応援してくれてありがとう』なんだけど、『優勝してこい』とかそういう声は、優花が試合の週には、耳にも頭にも入ってない。自分は自分の期待もあるし、なにより自分が大事だと思う。自分がゴルフをしたくてしているので、自分のためにゴルフが上達していけばいいなって思います。

(22歳になって国籍選択することについては考えている?)自分はできるだけ選びたくないですよね。自分は両方なので、自分が日本人だ、フィリピン人だって、言いたくないです。今のこの世界では、まだそういう(両方の国籍を持つという)ことがほぼないんですけど、自分の中で、どっちかを選ぶことになったとしても、自分の中では自分はフィリピン人だし、日本人だっていう気持ちは必ずあると思います。両方の国の重要な支えをもらっているので、どっちか選ぶのは自分もつらいです。(その時がきたら考える?)そうですね」

取材を終え、父・正和さんが運転する車に乗り込んだ19歳は、大きな優勝カップをお腹に抱えていた。それが、妙にぴったりに見えて、なんだかうれしい気持ちになった。自分が幸せになるために、笹生は今、楽しみながらゴルフをできているのだろうか?

「できていると思います。これから自分も大人になっていくので、人に『こうした方がいい』『ああした方がいい』と言われるのじゃなく、もっと自分がどうしたいか、『こういう選手になりたい』『こういう方法で自分のゴルフを作り上げていきたい』、そういうことをもっと考えていきたいと思います」

これが、初めて全米覇者となってまだ1日しか経っていない19歳の言葉だった。彼女の心にあるしっかりとした芯は、この広大なアメリカ大陸でも、迷うことなくこの先の道を示してくれるに違いない。(完)

(編集部・今岡涼太)

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