父と取り組む“進化”が生んだ涙の逆転劇 山下美夢有は「父の日に優勝したかった」
◇米国女子◇マイヤーLPGAクラシック 最終日(21日)◇ブライズフィールドCC(ミシガン州)◇6611yd(パー72)
優勝スピーチで、山下美夢有は自ら切り出した。「きょうは父の日。現地には来ていないんですけど、いつも支えてくれている…。優勝を届けられて本当にうれしいです」。コーチでもある父・勝臣さんへの思いを語ると、その目に涙が浮かんだ。5打差を追いつき、プレーオフを制した今季初優勝。米ツアー参戦2年目の24歳は特別な日に勝てたことが、何よりうれしい。
「父の日に優勝したい思いは強かったので、それがプレーに出てくれたのかな。家族全員が支えてくれて、いま調子が上がってきている。お父さんを含めて家族に感謝の気持ちです」。日本でU-NEXT中継を夜通し観戦していた勝臣さん、母・有貴さんに話しかけるように言葉をつないだ。
昨年9月、山下家に私設の練習施設が完成した。弾道測定器を備えた室内に最新機器も導入してトレーニングを行ってきた。山下にとって勝臣さんは唯一無二のコーチ。スイング面などの技術的部分はもちろん、体作りにおいても同じだ。これまでは柔軟性を失わないよう自重負荷中心で、器具を使ったメニューは禁止事項だった。しかし、山下が20代半ばに差し掛かる点を踏まえて「年齢的に内容を変える必要がある」という勝臣さんの考えもあって方針転換。新たな体作りに挑戦してきた。
進化した体で迎えた今季、すぐにうまくはいかなかった。山下は「今年に入ってなかなか自分らしいプレーができていなかった」という。最大の武器は精度の高いショット。ここまで11試合でトップ10は4度あったが、結果と理想の差に葛藤があった。2週前の前戦、メジャー「全米女子オープン」は最終日に5オーバー「76」を叩いて34位。現地に応援に来ていた有貴さんの前で泣いてしまった。
それでも、やるべきことは変わらない。今週も日本にいる勝臣さんとリモートで連絡を取りながら懸命にスイングを調整。「それが自信につながった。今週はいいイメージで4日間戦うことができた」。最終日はパーオン率94.44%(17/18)という圧巻のショット力を披露した。3mを沈めた1番から2連続バーディで勢いづき、米ツアー自己ベストタイ「64」をマークして通算17アンダーでホールアウトした。
2組後ろの最終組だったロティ・ウォード(イングランド)が最終18番(パー5)でまさかのボギーをたたいて、プレーオフに突入。1ホール目、18番の第3打。花道から約30ydのアプローチを奥1mへ。グリーン手前エッジから3mにつけたウォードがバーディを逃した後、下りラインを慎重に決め、力強く右こぶしを握った。
山下は「きょうは自分のプレーを褒めたいかな。優勝することができて自信になった」と照れ笑いを浮かべた。悔し涙を歓喜の涙に変えて、次週はメジャー第3戦「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」(ミネソタ州ヘーゼルティン・ナショナルGC)へ。「だいぶいい状態になってきている。メジャーも良いスタートを切っていきたい」。昨年の全英覇者が自信に満ちた表情で宣言した。