「山下美夢有さんは『全英』と同じ顔をしていた」 青山加織が見た“サイボーグ”のような強さ
◇米国女子◇マイヤーLPGAクラシック 最終日(21日)◇ブライズフィールドCC(ミシガン州)◇6611yd(パー72)
山下美夢有が米女子ツアー3勝目を挙げた。昨季のメジャー「AIG女子オープン(全英女子)」、マレーシア開催だった「メイバンク選手権」に続くタイトルは初の米本土V。最終日にツアー自己ベストタイ「64」で首位との5打差を追いつき、ロティ・ウォード(イングランド)とのプレーオフを制した戦いぶりを、中継局U-NEXTで解説を務めた女子プロゴルファーの青山加織に聞いた。
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山下さんは元々ポーカーフェースですが、最終日のスタートを見て「AIGの時と同じ顔をしている」と思いました。私は昨年8月、彼女が優勝したメジャーの「AIG女子オープン(全英女子)」でも中継の解説をさせてもらいましたが、その時と一緒。今季はここまで自分の調子を否定的に語ることが多く「そんなに悪いかな?」と思っていましたが、今週はやはり手応えがあったのでしょう。
この日は「完璧」としか言いようのないゴルフでした。3パットをした15番(パー3)を除いて、すべてのショット、パットがほぼイメージ通り。コースを攻めるセオリー通りのプレーをしていたのでは。どのホールが、どのショットが、どのパットが勝負どころになるのかも分かっていた気がします。
彼女は私たちと感覚が違うんです。例えば、見ているこっちが「今のは良かった」と感じても、納得いかない表情だったり、逆に「今のはちょっと…」と思うと、安心した表情だったりする。彼女の中に“彼女だけの基準”がある。そのレベルが違い過ぎるんです。5つ目のバーディを奪った7番の後、8番で2m弱のチャンスを外し、9番でティショットを左に曲げました。傍から見ると「これはちょっと…」と思うような展開も、本人はそう受け止めていない。だから10番で10m以上のバーディパットを決められるのだと思います。
オンとオフの切り替えもすごい。後半は前が詰まって“待ち”が長い場面が多かったけど、自分の番が来ると表情が変わる。プレーオフは当初、トップを走っていたロティ・ウォードが最も易しいはずの最終18番(パー5)でボギーをたたいて、急に決まりました。言ってみれば、まさかの展開。山下さんも多分「(プレーオフは)60、70%はないかな」くらいに思っていたと思うけど、決まった瞬間、それこそホント一瞬で顔つきが変わりましたからね。
自分に自信がある。求める水準が高い。プロならみんな、その水準を持ってるんだけど、そのための練習量をこなせなかったり、心理的にも強くなれなかったりするんです。でも、彼女はそれができる。ラウンドリポーターで米ツアーに詳しい片平光紀プロから驚くほどの練習量を聞きました。
プレーオフが決着したシーンは象徴的でしたね。ウォードはレギュラーラウンドの18番(パー5)をボギーにしたことを引きずっていたのか、アプローチを寄せ切れずにバーディが取れませんでした。でもね、それが人間なんですよ。山下さんはアプローチをきっちり1mに寄せてバーディです。最後の最後で実力を出せる。まるで10年以上、厳しい経験を積んできたみたい。いい意味で“サイボーグ”のような。それが山下美夢有というプロゴルファーなんだと思います。(U-NEXT解説者/女子プロゴルファー)