「アメリカなんか程遠い」桑木志帆の挫折と“世界を変えた”出会い
◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(2日)◇ロイヤルリザム&セントアンズGC (イングランド)◇6601yd(パー71)
桑木志帆はくじけそうな時、大ファンであるラッパー『LANA』の音楽に勇気をもらっているという。「生活には欠かせないもの」と言うほど存在を心の支えにしても、2025年は折れそうになった自分がいた。
2024年に国内メジャーを含む3勝と大ブレーク。年末の米ツアー最終予選会を見据え、さらなる飛躍を期したシーズンでまさかの国内ツアー未勝利に終わった。「アメリカなんか程遠いなって。結構自信をなくして、くじけてました」と明かす。
なくしたものを取り戻すには、強くなるしかない。それを支えてくれる人がいた。「いまのコーチ、岩本(砂織)さんに見てもらってから、自分の世界が変わるような、いろんな練習方法だったりを地道に続けてきた。海外で戦えるところまで、コーチが持ってきてくれました」と感謝を口にする。
4日間のフェアウェイキープ率3位(79%)、パーオン率1位(81%)と際立ったショット力とともに、本人は「パッティングの成長を感じます」と胸を張る。ことしのはじめからボールの近くに立つスタイルを取り入れ、4、5月頃からは両手を伸ばさず少しひじを曲げて構える特徴的なアドレスの土台ができあがった。「前までは、立ち方とかも全然分からなくて。いろいろ試行錯誤した結果、これが一番、手が動くなって」
それを磨き上げる過程において、コーチが提案するドリルが欠かせない。練習から結果にこだわりがちだった桑木を見抜いてひたすらタッチだけを意識させたり、連続でリズムよくボールを打って自分の軸を確認させたり…。トーナメントの練習日はパッティンググリーンに2時間ほど居座ることも珍しくない。
プレーオフ1ホール目、1Wショットを深い右ラフに突っ込んでレイアップを強いられ、1m強のパーパットが残った。決めなければ、ほぼ確実に負ける状況。「きのうの練習で構えてすぐに打つことがすごく大事だなって気付けた。それを朝からやってきて、割と感覚よく最後までパッティングできていた。緊張はあったけど、不安はありませんでした」。二人三脚で積み重ねてきたものは勝負どころで自分を裏切らなかった。
打ちのめされても諦めず、愚直にスポット参戦を繰り返した覚悟で夢を実現した23歳。華やかで劇的な勝利の舞台裏は、どこまでも泥くさかった。(イングランド・リザムセントアンズ/亀山泰宏)