西村優菜は逃げなかった 「行くしかない…」会心イーグルで米初勝利
◇米国女子◇ウォルマート NW アーカンソー選手権 presented by P&G 最終日(26日)◇ピナクルCC (アーカンソー州)◇6438yd(パー71)
長く、苦しい道のりの終わりもカッコよくありたかった。2オンに成功した最終18番(パー5)、2mのバーディチャンスを前に緊張感が走る。「最後が3パットだとちょっと恥ずかしい…」。後続との差はもう気にしなくていい。勝利を確信して放ったラストパットがカップに沈む。雨雲が去った空からの光をいっぱいに浴びて、西村優菜が笑った。
待望の米女子ツアー初勝利を前にした日曜日は重圧との闘いだった。初日から「63」を並べて16アンダーの単独首位に立ち、築いた2位との差は実に5打。大量リードは前半、みるみるうちになくなった。3番(パー5)でバーディを先行させながら、湿った地面でボールが転がらず、2打目に225ydを残した4番でたまらずボギー。6番(パー3)の3パットボギーで「流れが悪い」と焦りが湧いた。
迫ってきたのは31位から“裏街道”のトップでスタートし、「62」をたたき出した岩井明愛。西村は7番(パー5)終了時に逆転を許しながら、追う立場に転じて「気持ちが楽になった」という。続く8番、左サイドの木を避けて5Wでドローさせた2打目がピンそば2mにつき会心のバーディ。首位タイでハーフターンした。
11番(パー3)のチップインバーディで一歩前に出た。14番で勝負どころがやってくる。グリーン手前に大きなクリークが流れるパー5。緩やかなフォローの風を感じ、3Wで2オンを狙った。伸ばし合いのコースで守りに入るわけにはいかない。「バーディは必須。行くしかないよね」。キャディとの短いセッションの後、会心の当たりはピン手前に着弾し右奥4mで止まった。フックラインを読み切ってイーグル。「ドライバーも、3ウッドも完璧なショット。あの緊張感の中で体を浮かせずに打てたのがうれしかった」。長年付き合ってきた“悪癖”を極限の場面で封じ込めた。
2018年に畑岡奈紗がマークした大会最少ストロークに並ぶ「192」(通算21アンダー)。終わってみれば後続との5打差を守った形となった「66」は軽々と出したものであるはずがない。「長い一日だったなと思います」という言葉が苦労を物語る。
「夢のひとつがかなった」
米国でのキャリアも同じだった。日本女子ツアーで通算6勝をマークし、予選会を通じて2023年に本格参戦。3年目の昨シーズンに年間出場権を確保できずに再び予選会に回り、限定的な出場資格を必死につなぎ涙した。4年目の今季も今大会前までのトップ10入りはダブルス戦の「ダウ選手権」1試合だけ。年間ポイントレースは103位と、またしても来季の職場確保に思いを巡らせていたところで、鮮やかに初勝利をつかんだ。「予選会に行かなくていいのがうれしい」と苦笑するどころか、今季最終戦への出場や2028年までプレーする権利がいきなり転がり込んだ。
「なんか“突然変異”っぽい」と自らも認める窮地で訪れた最高の瞬間。「実際にそうなんですけど、やり続けてきたことがある。それがうまく重なってくれた。Qシリーズで最後の一打で(資格を)獲れたことも今につながっている」と歩んできた道のりに胸を張る。
2022年の日本ツアー「ニッポンハムレディスクラシック」以来となる優勝会見で、「夢のひとつがかなった」と言った。ふたつ目は「メジャーです」とはっきり口にした。「最終目標はやっぱりメジャー優勝。最後の目標に向かって、毎日、一生懸命できたらなと思います」。ここにはまだ、かなえたい願いがある。(アーカンソー州ロジャース/桂川洋一)