“オールブラックス”だった父の言葉 ライアン・フォックスが39歳でメジャー初V
◇メジャー最終戦◇全英オープン 最終日(19日)◇ロイヤルバークデールGC(イングランド)◇7223yd(パー70)
ドラマチックな逆転劇が待っていた。首位に並んで最終18番に帰ってきたライアン・フォックス(ニュージーランド)は、3mのバーディパットを打つ前に185cmの大きな身体を震わせていた。カップにボールが沈んだ瞬間に両手を突き上げると、バークデールに大歓声が響き渡った。2打差2位から「68」で回って通算10アンダー。接戦を1打差で制して掲げたクラレットジャグ。同国勢の全英制覇は1963年のボブ・チャールズ以来63年ぶりだった。「本当に信じられないし、夢のよう。歴史の1ページに自分の名前を刻めるなんて…。頭がパニックになっていて、今の気持ちを表現する言葉が見つからない」
初日2オーバー85位と出遅れながら、日を追うごとに順位を上げた。52位で迎えた第3ラウンド。今大会で3人目となるメジャー最少スコアの「62」をマークして優勝争いに加わる。最終日はフォックスに、キャメロン・ヤング、サム・バーンズ、キム・シウー(韓国)の4人が一時通算8アンダーで並ぶ混戦模様。「サンデーバックナイン」と呼ばれる勝負どころで強さを発揮し、13番で第2打を3.5mに寄せたバーディを皮切りに、終盤に3つスコアを伸ばして勝ち切った。
ニュージーランドのスポーツ一家で育った。祖父のマーヴ・ウォレスはクリケット代表選手で、父のグランドはラグビー代表「オールブラックス」のメンバーだった。祖父、そして両親からのサポートを受けて2012年にプロ転向し、豪州ツアーを主戦場とした。しかし2年目にゴルフを辞めようと思ったこともあった。当時はシード権を失いかけ、精神的に追い込まれていたという。
そんな時に、キャディを務めてくれた父からかけられた言葉が忘れられない。「お前はなんでゴルフをやっているんだ?」。楽しむためにプレーしていることに気づかされたという。その大会で5位に入ってシードを死守できたことが、メジャーチャンピオンへの道につながった。「今回の優勝が父や祖父の実績を超えるものかどうかは分からないけれど、間違いなく引けを取らないものだと思う」と胸を張った。
フォックスは、ツアー屈指のプレーペースの速さでも知られる。「子供の頃からずっとこのスタイル。物事を直感的に、素早く捉えるタイプで、子どもの頃にやっていたクリケットでも同じ。考えすぎて時間をかけ始めると、余計な邪念が入るから」という。ただし、歩んできたキャリアは真逆。DPワールドツアー(欧州ツアー)1年目を30歳で、PGAツアー(米ツアー)1年目を37歳で迎えた。「なぜ遅咲きなのかは分からないよ。毎年少しずつでも成長していけるなら、それで十分に幸せ」と笑う、39歳で初めて手にしたメジャータイトルだった。(イングランド・サウスポート/中村文香)