300yd超は当たり前の時代でも…飛ばすだけでは勝てない米ツアーの飛距離事情
PGAツアー(米ツアー)は前週のプレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」で年間王者が決まり、シーズンはひと区切りを迎えた。来季シード争いがメインとなる2週後からのフェデックスカップ・フォール(秋季シリーズ)を前に、世界最高峰の舞台をスタッツで振り返る。第1回はティショットの平均飛距離を示す「ドライビングディスタンス」。
まず目につくのが、ツアー全体で進む平均飛距離の“インフレ”だ。今季の平均は306.2ydで、リー・ホッジスまで実に121人が300ydの大台を超えている。10年前の2016-17年シーズン(27人)から約4.5倍と、“300yd超”はいまや珍しい数字ではなくなった。
そんなハイレベルな競争の先頭を走るのが、アルドリッチ・ポットギーター(南アフリカ)だ。昨季も平均325ydで同部門1位に輝いた21歳は、今季さらに距離を伸ばしツアー平均を約25ydも上回る331.1ydでトップに立っている。ヘッドスピードもツアー屈指の125mph(約55.9m/s)を超え、6月「RBCカナディアンオープン」では402ydのビッグドライブも記録した。平均飛距離のツアー記録はロリー・マキロイ(北アイルランド)が2022-23年に残した326.3ydで、このままのペースなら5yd近く更新する勢いだ。
ただ、飛距離だけでは測れないのがゴルフの面白さだ。ポットギーターは今季いまだ勝利がなく、年間ポイントランキングは68位。圧倒的な飛距離を誇る一方で、フェアウェイキープ率51.83%は全体147位、パーオン率64.46%は124位、平均パット数1.781は128位と、飛距離のアドバンテージをスコアへ十分に結びつけられていない。
その意味で対照的なのが、ポイントランク4位のマキロイだ。今季「マスターズ」で史上4人目となる連覇を果たした実力者は、平均飛距離2位の330.3ydとこちらも大台を突破。さらにストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティ(ティショットのスコア貢献度を示す指標)でも「0.737」でツアー2位につけている。一方のポットギーターは「0.476」で16位。ただ遠くへ運ぶだけではなく、飛ばす力をそのままスコアへ変えていることがわかる。
3位は8月「ウィンダム選手権」でツアー通算2勝目を飾ったマイケル・ブレナン。平均飛距離は327.1ydでストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティでも3位につける。
「ツアー選手権」を制し、2年ぶり2度目の年間王者に輝いたスコッティ・シェフラーは312.7ydで35位。ツアー平均は上回るものの上位勢とは15~20ydほどの開きがある。それでも、ストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティでは5位につけており、方向性を含めたティショット全体の完成度の高さが年間王者の強さを物語っている。
日本勢で唯一ツアー平均を上回るのは久常涼だ。米ツアー本格参戦の2024年(295.4yd)から着実に伸ばし、自身最高の306.9ydで70位につけている。松山英樹も直近3年で最も高水準の304.1ydを記録して98位。日本で見れば十分に“飛ばし屋”といえる数字だが、米ツアーでは平均以下にとどまる点も世界最高峰のスケールを示す。
ちなみに、下部コーンフェリーツアーの平均飛距離は310.0ydと米ツアーの平均を上回っている。若い世代を中心に飛ばす力が底上げされている一方で、飛距離だけで勝敗が決まるわけではないことをシェフラーが体現している。