2012年 全米オープン特集
2012年 全米オープン
期間:06/14〜06/17 場所:オリンピッククラブ(カリフォルニア州)
再びメジャー大会でチャンスを得たウェストウッド
もしメジャーチャンピオンシップが63ホールで争われる競技であれば、リー・ウェストウッドは既に2度勝っていることになる。しかし、最後の9ホール-とりわけ最後の18ホール-はウェストウッドにとって鬼門となっている。日曜日の最終ラウンドに再びチャンスが回ってきた。
大激戦となった3日目、ウェストウッドは「67」を叩き出し通算2オーバーに浮上、ジム・フューリックとグレーム・マクドウェルが並ぶトップに3打差の好位置で最終日を迎える。ウェストウッドにとって今大会がメジャー57試合目。日曜日の夜、世界ナンバー3が葉巻を吸っているか、はたまた接戦に負け苦汁をなめているか…。
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「ここ3、4年で俺は世界中の誰よりもメジャーチャンピオンシップで優勝争いしていると思う」とウェストウッド。これは事実であり、決して嫌味ではない。「だから明日は楽しみにしているよ。ラウンドをエンジョイして、どうなるか楽しみだ」
ウェストウッドは過去10メジャー大会で6度(過去15大会で7度)も2位または3位に入っている。直近ではバッバ・ワトソンが勝利したマスターズでの3位タイで、この時はプレーオフに2打及ばなかった。過去78年のゴルフ界をみても、ウェスウッドはメジャー大会で最もトップ3以上に入っていて且つ勝てていない選手だ。
しかし、ウェストウッドは逃したチャンスを悲観するような選手ではない。今年のマスターズ決勝ラウンドで「75」「71」を叩いたセルヒオ・ガルシアのように、ウェストウッドは記者や友人や誰に対しても「俺はメジャーを勝てるモノを持っていない」など弱音を吐いたりしない。
「俺はそんな人間じゃない。『グラスは半分埋まっている』と考える。楽天主義なんだ」
ウェストウッドの飲みっぷりの良さは有名な話で、この後、「でも実際俺のグラスはいつも空っぽだ」と冗談を飛ばしていた。真面目な話、彼以上に愚痴を言いたい選手はいないだろう。ただ彼は全ての経験を強さに変えている。
「毎回優勝争いをする度、何か新しいことを学ぶ。これまで俺はいろんな形で優勝争いに加わってきた。リードしている時もあれば、追い付こうとしている時もある。それぞれの経験から何か得て、次の試合に生かそうとしているけど、最も重要なことは自分にも『できる』ということを信じること。それはできていると思う。だって毎回上位に入ってるわけだから」とウェストウッド。
ウェストウッドがメジャーで2位または3位にフィニッシュした7試合のうち、彼がチャンスを逃したというよりも、たまたま絶好調の選手に当たってしまった試合もある。例えば、2010年全英オープンではルイス・ウーストハイゼンに7打差を付けられて2位に入り、昨年の全米オープンでは優勝したロリー・マキロイに10打差の3位タイでフィニッシュした。
一方、2008年全米オープンと09年全英の3位タイ、または2010年マスターズの2位は優勝するチャンスが大いにあった。前者の2試合ではサンデーバックナインを首位で折り返し、10年のマスターズでは最終日を結果的に優勝したフィル・ミケルソンに1打差リードして迎えた。
トーレーパインズで行われた08年全米では最終日にタイガー・ウッズと最終組で回り、10、12、13番でボギーを叩きサンデーバックナインのプレッシャーが高まる中、追い付く側に立つことになってしまった。それでも18番ホールでは6メートルのパットを決めていれば伝説となったタイガーVSロコ・メディエイトのプレーオフに駒を進めることができていた。
ターンベリーで行われた09年全英では、最後の4ホールで3ボギーを叩き脱落。最終ホールでは、プレーオフに進出するためにバーディが必要と思い18メートル強から攻めた結果が3パット。パーで上がっていればトム・ワトソン、スチュワート・シンクとのプレーオフに進出していた。
そして、最後に一昨年のマスターズ。ここではミケルソンが素晴らしいゴルフを展開。ウェストウッドの「71」に対し、ミケルソンは「67」を叩き出して3つ目のグリーンジャケットを手にした。
「この舞台で勝つのは難しい。自分が最善のプレーをして、あとはどう転がるか待つしかない時もある。誰かが自分よりベターなゴルフをする時もある。誰にだって勝つチャンスはある。だから俺は楽しみながら自分のベストゴルフをして、優勝争いに入れるようにすること」
さぞかし土曜日のラウンドは楽しかったことだろう。最終ホールの「まさかの一発(バーディ)」を含む5バーディ。2日目から25位順位を上げ、最終ラウンドを4位タイで迎える。最終組から一つ前の組からフレドリック・ヤコブソンとのラウンドになる。
直近のメジャー最終日の記録も上々だ。予選を突破した過去8メジャー大会で、ウェストウッドは最終日にパーまたはアンダーパーで回っている。ラウンド後、記者に「待望のメジャーは時間の問題か」と聞かれ慎重に言葉を選んだ。
「『絶対』はないだろ。勝てるのは明日かもしれないし、全米プロ、全英かもしれないし、ひょっとしたら勝てないかもしれない。でも俺にできることは何だ?ベストのゴルフをするだけだ」――by Helon Ross, PGATOUR.COM