ウェストウッド、3Rのリードを守れずメジャー初優勝逃す
2013年 全英オープン
期間:07/18〜07/21 場所:ミュアフィールド(スコットランド)
「ついにやったぞ!」ミケルソン
ジム“ボーンズ”マッケイは、はっきりと物申す男だ。もちろんそういう状況であれば、の話だが。
少なくともこの20年の間、フィル・ミケルソンのキャディを務めて来た彼は、日曜日のラウンド後に、感極まった。ミュアフィールドの18番で主(あるじ)であるミケルソンが15フィートのバーディパットを沈めると、フィルはマッケイの元へ歩み寄り、相棒のキャディを抱きしめ、「やったぞ!」とシンプルに一言、ささやいた。
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そして二人は、互いの肩に腕を回しながらスコアリングトレーラーに向かった。キャディのマッケイは、溢れそうな涙をグッとこらえていた。トレーラーにたどり着くと、ミケルソンは全英オープンで3ストローク差をつけての優勝と同時に、キャリアグランドスラム3つ目を引き寄せた、驚異のスコア「66」を記したカードにサインした。
20分ほどが過ぎた頃、マッケイがクラブハウスから出て来ると、彼はまたたく間に30人近いレポーターに囲まれた。不意打ちを食らって緊張が緩んでいたのだろうか、彼は話しをはじめる前に、レポーターに背を向けると、ひざまづいて嬉しさのあまりこぼれ落ちる涙をぬぐった。ようやく落ち着いたマッケイは、彼が何故それほどミケルソンの5つ目のメジャー優勝に感動したのかを説明しだした。
「21年間、一人の男に仕えてきたので……」と、マッケイはゆっくり丁寧に言葉を紡いだ。「今は最高にいい気分です。彼(ミケルソン)のこれまでで最高のゴルフを見届けることができたのですから。しかも全英オープンの最終日に(優勝を決めるラウンドを)ね。だからあんなにも感情が高ぶってしまったのです」。
一方のミケルソンは、終始笑顔で対応していた。会場を去る際には、インストラクターを務めるブッチ・ハーモン氏、大学時代のコーチでありマネージャー役のスティーブ・ロイ氏と抱擁し合い喜びを分かち合った。
彼はエイミー夫人と3人の子供、アマンダ、ソフィア、エバンをギュッと抱きしめたまま最終組のプレーが終了するのを見届け、正式な結果が出るのを待っていた。
夫の側をめったに離れないエイミー夫人が、一人になった瞬間に感想を聞いてみると「まだ、びっくりしています」と彼女は言った。「言葉になりません」と言った彼女は目を見開いたまま唇を指で触り、まだ上の空という感じだった。
優勝を称えるクラレット・ジャグを渡されたミケルソンは、しきたり通り壮大なグリーン横のグランドスタンド前まで歩くと、写真撮影のためにポーズを決めた。その間、彼はずっとトロフィーを握りしめていた。全英オープン王者を称える表彰式の最中も、その後に引き続き行われたインタビューの間も、彼の右手はずっと、彼の名が刻まれたばかりのクラレット・ジャグの底の部分に添えられていた。
「今日という一日、そしてこの瞬間は、一生忘れられないね」と、43歳のミケルソンは語った。「とても特別な時間です。私のキャリアの中でも最高の達成感を味わっています」。
過去19度の出場を誇るミケルソンが、全英オープンのトップテンに入ったのはわずか2回だった。ミケルソンは全英オープンでは勝てない。誰もがそう思っていたはずだ。しかしミケルソン本人は、2004年にショートゲームの専門家のデーブ・ペルツと一緒に英国に出向いてボールを高く打たないプレーをものにした時、何かを掴んだと感じていたようだ。確かにその年、彼は優勝したトッド・ハミルトンとアーニー・エルス(南アフリカ)とで争われたプレーオフに、1ストローク及ばなかったものの、3位に食い込んだのだった。
最終日の日曜は、ミュアフィールドのグリーンは特に乾燥していた。ミケルソンのパッティングが、勝負の差を付けた。彼はバックナインで「32」をマークし、最後の6ホール中4ホールでバーディを獲り、彼の後続を回っていた最終4組のプレーヤー達に思いを届けた。ミケルソンは4日間通算で3アンダーパーを記録し、72ホールで唯一のマイナススコアを出した。そしてヘンリック・ステンソン(スウェーデン)に3ストローク差で勝利した。
薄曇りのスコットランドの午後、ティオフの直前にハーモンとミケルソンが話したことは、無駄にはならなかった。
「私はイーブンパー、1アンダーなら勝てるよ、と言ったんだ」とハーモンは振り返った。「そしたら彼は『もっと良いスコアを出すよ』だって。見事その通りになったね」。
今回の全英オープンでの優勝は、4週間前の絶望的な出来事とも言える「全米オープン」で史上最多となる6回目の2位を記録したすぐ直後の出来事だけに、余計に感心してしまう。ミケルソンは、メリオンでの最初の3日間、毎日トップあるいはトップタイにつけていた。しかし最終日の上がり8ホールのうち3ホールでのボギーが大きく響いて、ジャスティン・ローズ(イングランド)に逆転で優勝をさらわれた。
正直なところミケルソン自身も、最後までどちらに転ぶか分からないと思っていたそうだ。何しろ確実に手中に収めたと思われた大会で何度も崩れてしまった経験があるのだから。
「ゴルファーたるもの、打たれ強くなければいけません。だって負ける事が大きな部分を占めている競技ですから」と、彼は説明した。「全米オープンで負けてから、調子が悪くなるのは当然といえば当然です。私はあの時、落ち込んでしまって立ち直るのに時間がかかった。でも客観的に見れば、プレーそのものはとても良いプレーをしていました。こんな些細なことに、今年これから獲得出来るかもしれない勝利や、素晴らしいプレーを阻止されてたまるか、と思い直したのです」。
「諦めなくて、本当に良かった。あの時(全米オープン)以来、私はこれまでより少しだけハードな練習を自らに課してきました。ひと月もしないうちに、私の気持ちは完全に吹っ切れました」。
全英オープンでの勝利が重圧となり、ミケルソンの来季以降の全米オープンでの優勝をさらに困難にするのかどうかは、まだ誰にも分からない。しかし確かなことは、来年の6月には、パインハーストの有名なあのNo.2 コース、そう、ミケルソンが初めて父となる前日にキャリア最初の準優勝を遂げたあの場所で、キャリアグランドスラムを達成した5名の世界ゴルフ殿堂入りプレーヤーに仲間入りするチャンスが与えられるのだ。
フェデックスカップと世界ランキングで揃って2位に浮上したミケルソンは、キャディのマッケイが言う「ビッグステージ(大舞台)」が大好きで、そういう場面でこそ、彼は光輝く。そして今後8週間で、最大のイベントが6つも開催される。「RBCカナディアンオープン」、「WGC ブリヂストンインビテーショナル」、そして4つの「フェデックスカッププレイオフ」だ。
これらの大会全てで、ミケルソンは注目の的となるだろう。
「彼とは長い付き合いだが、彼が今ほど強かったことは過去にない。これほど身体がキレていたことも、これほどハングリーだったことも、かつてないよ」とマッケイ。「彼がどれほど勝負に徹して、いい結果を欲していたか、うまく表現しきれません」。
「よく冗談で彼にいうんですが、きっと彼は60歳になっても、あのオーガスタのパッティンググリーンに立って『さあ、チャンスがやってきた』と言い聞かせてゴルフを続けているだろうってね。フィルは、そういう男なんです」。
日曜日のミュアフィールドで見たミケルソンのプレーこそ、彼本来の姿だったのだ。
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