この世に2つとないアダム・スコットの新アイアン
2022年 ザ・メモリアルトーナメント
期間:06/02〜06/05 場所:ミュアフィールドビレッジGC(オハイオ州)
アダム・スコットが「メモリアル」で試打した謎のアイアン
アダム・スコット(オーストラリア)が「ザ・メモリアルトーナメント」の会場、ミュアフィールドビレッジGCへやって来たとき、ゴルフバッグには唯一無二のアイアンセットである「タイトリスト 681.AS」を入れていた。しかし、これは驚きでも何でもなかった。スコットはこのカスタムメイドのアイアンセットを昨年10月の「ザ・CJカップ@サミット」から使い続けてきたのである。
「タイトリスト 681.AS」は、よりオフセットがあり、トウ側が高く、ブレード長が長いという、スコットの好みに完全に一致するよう作られた特別なアイアンである。基本的には、スコットが14勝を挙げたPGAツアーのキャリアの大半で使用したアイアン「タイトリスト 680フォージド」のアップデート版といえる。680アイアンが世に出たのは2003年のことだった。
<< 下に続く >>
「年を取って頑固になると、好きな物は譲れないんだ」と、41歳は10月にPGATOUR.comに語った。「長い間、680を使い続けてきた。これ(681.ASアイアン)はほぼ完全なレプリカだけど、製造方法の違いにより、ヘッドや打感はこちらの方がよりソリッドといえるかもしれない」
スコットはもう何カ月も「タイトリスト 681.ASアイアン」を使っている。しかし、興味深いことに、「メモリアルトーナメント」開催週の初めにスコットは古い「タイトリスト 680フォージド」の8番アイアンをバッグに入れていたのだが、このクラブはソールがより平らに削られ、バウンスがわずかながら小さくなっていた。スコットはGolfWRXの取材に応え、よりフラットなソールを比較するため、たまにこの8番アイアンを681.ASに対して試打するのだと教えてくれた。
しかしながら、「メモリアルトーナメント」における練習ラウンドでは全く新しいブレードアイアンのセットをバッグに入れていたのである。このクラブのマッスルバックに刻印されているのは、彼のロゴのみだった。
スコットはこの謎めいたアイアンセットについて、練習レンジでのセッションの直前に開封したものだとGolfWRXに言った。最初の練習レンジでの試打で見た目のテストをクリアしたこのアイアンセットを、スコットは練習ラウンドでバッグに入れたのである。スコットがこのアイアンをゴルフコースで打つのは、これが初めてのことだった。
では、このスコットのロゴが刻印されたアイアンは、一体何なのであろうか? 彼はGolfWRX.comに対し、軟鉄鍛造アイアンの製造を専門とする日本のゴルフ用具メーカー、三浦技研の作った完全なるカスタムメイドのアイアンだと教えてくれた。
練習ラウンド後、GolfWRXはスコットと膝を突き合わせ、彼の真新しい唯一無二のアイアンの試打の具合や、実戦投入するかどうかについて聞いてみた。
スコットは「何とも言えないね」と言い、こう続けた。「というのも、まだ日が浅いから。新しいクラブセットをいきなり投入するのは難しいからね。でも、僕は(この新しいセットを)エンジョイしたよ。これは素晴らしいクラブセットだと思う。確信が持てるようになるまで、まだ何日か必要だけど、このアイアンはやるべき全てのことをやっている」
スコットによると、彼の681.ASと、この三浦のアイアンの違いは、ソールにあるという(彼は大会週の月曜日によりフラットなソールの680フォージドを試打していたのである)。
「本当に違いはソールの設計だけなんだ」とスコット。「(三浦の方が)少しだけバウンスが小さいんだ。ソールが少しフラットでワイドなんだ」
「僕のブレードアイアンに対する見た目の好みは、メーカーにより製造されているほとんどのブレードアイアンとはかなり異なるんだ。僕はオフセットとともに育ったのだけど、これはほぼ過去の物となりつつある。大きなヘッドのアイアンでさえ、オフセットは小さくなってきているからね。でも、僕はそれが好きで、今では入手しにくくなっている。タイトリストは、オフセットがあって、僕がそれまで使っていたクラブ(タイトリスト 680フォージド)にそっくりな681.ASという素晴らしいセットを作ってくれた。そして、これは、それらよりもバウンスを減らそうという着想の元で作られたセットなんだ」
スコットはブレードアイアンのデザインには、確固たる好みを持っているのだが、このバウンスを減らす要求は、美的なものではなかった。実際のところ、それは統計に基づいた要求だったのである。
「数年を通した異なるターフの状態に関するスタッツみたいな、かなりマニアックなことを掘り下げていくと、もしかしたら、クラブの底には、より良いバランスポイントがあるかもしれないと思ったんだ」とスコット。「ミウラとコンタクトを取り、僕の好みの見た目のクラブセットを作れないか打診したんだ。僕は彼らのアイアンで、そのソール形状をしたもの(MB-10)を打ったことがあったので、そのソール形状のものを作ってくれないか、聞いてみたら、彼らは“イエス”と言ったんだ」
一般販売している三浦技研のMB-10ブレードアイアンには、クラブのリア部分に同社のロゴが刻印されているが、スコットのカスタム設計のヘッドには、彼個人のロゴが刻印されている。実際のところ、この最後のひと手間が、通常よりもこのアイアンセットを試打するタイミングを早めさせるきっかけになったことをスコットは認めた。
「僕は自分のロゴを刻印して欲しいと依頼してさえいなかったのに、彼らはこれを送ってきてくれたんだ。とてもクールだね」とスコット。「彼らは、(僕のロゴを)刻印すれば、僕が我慢できなくなるのを知っていたのかもしれない。僕はすぐさまこのアイアンセットを練習レンジに持って行ったからね。箱から練習レンジへ、1分半ほどで移動したね」
見た目とパフォーマンスを別にすると、ホーゼルの刻印が示す通り、三浦のアイアンは日本製なのだが、彼の「タイトリスト 681.AS」と比べて、打感に違いはあるのだろうか。
「681.ASアイアンには驚くべき素材が使われている」とスコット。「僕はその素材を知っていて、もし、スコッティキャメロンのパターと違う素材だったとすると、かなり類似したものだと思うけれど、僕は常に同じ素材だと思ってきた。だから、かなり良い素材ということだね。ミウラは素晴らしい金属を使うことで良く知られている。どちらも素晴らしい打感だと思う。僕が求めているのは、ターフの抜け具合なんだ」
ミュアフィールドビレッジの芝の状態からすると、スコットは、このフラットなソールの新しいアイアンはこのコース特性に対して必ずしも適しているとはいえないとしつつ、「全英オープン」のような今後開催されるより硬いターフの大会での使用は視野に入れていることを示唆した。
「ミュアフィールドビレッジGCは、最高のテスト環境とは言えないね。(芝は)豪華で最高の状態だから」とスコットは説明した。「これはバミューダ芝や全英オープン的なタイトなライで、自分のボールストライクを向上させたい場所向きだね」
彼はこの週に初めてこのアイアンを使ったばかりだが、仮によりフラットなソールが彼の望むターフの抜け具合の向上に直結するようであれば、セントアンドリュースで開催される「全英オープン」が7月に控えていることを考えると、このアイアンセットは予想を上回る早さで実戦投入にこぎつけるかもしれない。
スコットがアイアンの変更を敢行するのか、あるいはタイトリスト681.ASアイアンを使い続けるのか、我々は今後もその情報をアップデートしたい。
(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)