タイガー・ウッズ 復活の軌跡
【WORLD】最終日首位スタートは優勝できない?
Golf World(2012年5月14日号) texted by David Barrett
ロリー・マキロイは昨年のマスターズ最終日で4打差を逆転され優勝を逃した。しかし、その時の教訓をすぐに生かし、同年の全米オープンでは8打差のリードを守り、優勝した。「最終日へのアプローチには2通りあると思う。リードを守ろうとするか、もしくは『OK、今4打差だから5打差にしてやろう』と思うかだ。僕は去年のマスターズで前者が機能しなかったことを経験した」とマキロイは言う。
実際には、最終日を2位と大差をつけた状態でスタートすることは簡単なことではない。どういう戦術を駆使するか迷い、それがスイングにも影響を及ぼす。そして、仮に2位と4、5打差を付けたとしても、それが勝利を保証してくれるものではない。2003年以降、最終日を同等の差をつけて首位でスタートした選手は58人中、13人は優勝を逃しているからだ。
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ローズは、「上手くプレーしようとするのではなくて、ミスをしないようにと考えが変わってしまうものなんだ。突然、『よし、どんでもないミスだけは避けよう』という風に考え始めてしまうんだ。3日目を終えて首位に立った自分ではなくて、どこか遠慮がちな自分が出てきてしまうんだ。それから問題が起こる」と言うのだ。
ラウンドを通して厳しい戦いを強いられてくると、また新たな敵が姿を現す。そう、今度は「緊張」だ。
ヴァリアンテ博士によれば、「プレッシャーは感情を増幅させるんです」とのこと。「木曜日はパットミスを些細なミスにしか感じませんが、それが優勝の絡む日曜日になると、パットミスを“重大な危機”のように受け止めてしまう。実際にはそんなことはないんですが」と続ける。結果として、最終日の選手のスイングが緊張を象徴するようになるケースが多く、コスティスも「どのスイングも同じようにおかしくなるもの」とスイングコーチの観点から分析。「プレッシャーを感じると、大きな筋肉が強張って、小さな筋肉の動きが速くなり始める。だからリズムも普段より速くなってしまうんだ」。
ヴァリアンテ博士は、多くの選手はスイングが壊れたと思い始めるというが、実際には筋肉の緊張からくる影響と、リズムの変調がスコアを崩す原因と指摘している。もし緊張を解きほぐすことができれば、自然とスイングは元通りになるという。
では、どうすれば良いのか?
「選手達に指導しているテクニックとして、マッスルリラクゼーションという方法があります。最もシンプルな方法としては、グリッププレッシャーを緩めることですね。うちの選手達は常に『ソフトハンズ』という言葉を使って、それを心掛けるようにしています」とヴァリアンテ博士は言う。
最終日に取りこぼしが少ないミケルソン(最終日を首位で迎えた試合で23勝10敗)は、日曜日の攻略法について「スイングのメカニックや、ボールを打つことについて心配はしないね。ただ単に、ボールをホールに入れて、仕事を終わらせることしか考えていないから」と、自論を展開する。対処法を知るのも1つの方法だが、もし初めて最終日を首位で迎えた場合、ロテラ博士は前夜、ありとあらゆる状況を想定し、その時の対応を決めておくという方法もあるという。