欧州3強が揃い踏み ライダーカップの英雄らも集結
2012年 ライダーカップ
期間:09/28〜09/30 場所:メディナカントリークラブ(イリノイ州)
【WORLD】セベのために― 欧州選抜が歴史的大逆転勝利/ライダーカップレビュー
Golf World(2012年10月8日号) texted by Jim Moriaty
なんとかマキロイを欠くことなく最終日を迎えた欧州選抜は、それでも出だしから勝利を重ねる必要があった(サイレンとライトをけたたましく付けて走るくらいに?)。キャプテンのオラサバルはベストな状態にあった選手から先に出し、それを見たアメリカ選抜キャプテンのデイビス・ラブIIIは自分達に有利と考えていた。だが試合が始まると欧州選抜が17、18番をそれぞれ2度取り、最初の5ポイントを獲得したのだ。ドナルドがバッバ・ワトソンに納得の勝利を挙げると、ポールターが挨拶代りのワッグルを抑えつつ、ラスト2ホールを制してウェブ・シンプソンを撃破。続いてマキロイも大会中ベストパフォーマンスを披露した。6バーディを記録しキーガン・ブラッドリーに勝利。そしてブルックライン以来、久々のライダーカップ出場となったポール・ローリーがブラント・スネデカーを下し、更にはジャスティン・ローズが17、18番でバーディを記録しフィル・ミケルソンに勝利した。
ローズは勝負を決めた2連続バーディ(17番は12mのロングパット)について次のように語っている。「ラスト2ホールでのパットは人生でも最高の2パットだった。17番では芝も上手く読めて、美しいパットだった。18番は緊張で手が震えた。勝負に関わる重要な場面だったからね。自分自身に対して『ロージー、これが勝負の分かれ目だ。勝つか負けるか、それとも引き分けるか。ライダーカップの命運はこのパットにかかっているんだ』と語りかけたさ」。
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大会を通して好調を維持していたミケルソンとブラッドリーのペアは、フォアサムとフォーボールで3-0としていたのだが、キャプテンのラブは、2人を最終日フレッシュな状態でプレーさせる為、土曜日の午後はメンバーから外し休養を与えた。おそらく、1ポイントの為にリスクを犯したくはなかったのだろうが、結果的に欧州勢の息の根を止めたであろうポイントを取り逃した。もしリードを広げていれば、最終日のシングルはさほどの意味を持たなかったであろうに。まさしく、”戦術で勝ち、試合に負ける”を体現した格好だった。
アメリカはダスティン・ジョンソン、ザック・ジョンソン、ジェイソン・ダフナー(最終日はルーキー4人の中で唯一ポイントを獲得)の活躍でチームの命を繋いだが、大会中不振に喘いでいたリー・ウェストウッドがマット・クーチャーに勝って欧州選抜が差を縮めると、黄金のトロフィーをアメリカが勝ち取れるかは、ラブが最後の2名として指名したジム・フューリック(42歳)、スティーブ・ストリッカー(45歳)、そして最終選手のタイガー・ウッズが2勝を挙げられるかに託されることに。しかしフューリックは17、18番ホール(両ホールともボギー)で敗れた3人目のアメリカ選手となり、セルヒオ・ガルシアに敗退。ストリッカーも17番をボギーとし、対戦相手であるマーティン・カイマーも同じくボギーを叩くが、最終ホールでカイマーはパーセーブ。これで最低でも引き分けが確定した。そしてストリッカーは、きっと脳裏に1991年の大会(キアワ)でベルンハルト・ランガーが犯したミスパットが過ったのだろう。1.5mのパットを外してしまった。
18番のグリーン上が騒然となった後、ウッズは最終ホールを落とし、フランチェスコ・モリナリと引き分けに終わり、意味の無い0.5ポイントが加算された。「既に勝負は決まっていたようなもの」とウッズ。つまりはこういうことだろう。勝利の証は優勝カップのみで、14-14の引き分けではない、と。勝利した欧州選抜がフラッグを身に纏うと、アメリカの主将ラブがマキロイのもとに歩み寄り握手を求め「時間に間に合って良かったよ」と微笑みながら語りかけ、負けを認めた。「どう言って良いのかわからないが、ショックを受けているのは確かだ。99年のライダーカップの時の相手の気持ちが今なら理解できる。少々、きついね」。
ストリッカーは4戦全敗で、アメリカ選抜で唯一となる未勝利に終わった。そしてウッズも0.5ポイントにとどまった。そしてフューリックの失望感は彼ら2人のそれより更に深い。「今年は全米オープン、ブリヂストンでも負けた。正直に言って、本当に難しい年だ」としたフューリックは、今回の敗戦についても「自分のキャリアでも最低地点」と落胆の度合いを形容した。