欧州3強が揃い踏み ライダーカップの英雄らも集結
2012年 ライダーカップ
期間:09/28〜09/30 場所:メディナカントリークラブ(イリノイ州)
【WORLD】セベのために― 欧州選抜が歴史的大逆転勝利/ライダーカップレビュー
Golf World(2012年10月8日号) texted by Jim Moriaty
「シングルが勝敗を分けた」とは、シカゴのギャラリーにブッシュ元大統領の言葉。しかしライダーカップのポイントの57%はフォーボール、またはフォアサムで得られるものであり、ライダーカップをライダーカップたらしめている要素の80%を占めている形式だ。勝利に歓喜しハグ、互いの拳をゴツンと合わせ、胸を突き合わせ、時にはチームメートの尻を叩いて健闘を称え合う場面がみられる。ミケルソンは初日の午後にブラッドリーとのコンビで勝利後、軽く尻を叩き喜びを表したが、それからの2日間はまるで野球チームのオーナー。ミケルソンとブラッドリーの2人は、欧州選抜チームのマジョリティオーナーのようだった。
ブラッドリーは差し詰め2012年のミケルソン大学卒業生総代といったところだろう。練習ラウンドというセミナーに参加し、学費ローン返済には十分なだけの大金を稼ぐなど、大会に向けた準備に余念はなかった。26歳のブラッドリーは、ショットの前にはチャチャでも踊るようなステップを踏み、パットの際には頭を起こし、ビリヤードでエイトボールをサイドポケットに入れるような姿勢を取った。4年前のバルハラで開催された大会では、ミケルソンはルーキーのアンソニー・キムから活力を得た。今回のケースと比較するならば、AAAバッテリーがバーモントパワー・アンド・ライトと同等のワット数を発動したと例えられる。また、アメリカで唯一ポールターと張り合えたのもブラッドリーだったのではないだろうか。土曜日、ミケルソンとブラッドリー組にとって最後となったフォアサム、2人は大会記録タイである7&6の大勝利をおさめている。
かつては“ドリームチーム”と呼ばれたストリッカーとウッズは金曜と土曜で共に3戦全敗としたが、アメリカが最終日を10-6で迎えられた為、敗戦の責任からは大分軽減されたことだろう。アメリカはブラッドリーが3ポイント、ジェイソン・ダフナーとウェブ・シンプソンが2ポイントずつ、ブラント・スネデカーが1ポイントを獲得。ワトソンはメトシェラ級の活躍とはいかず、しかし昨年のプレジデンツカップからコンビを組むルーキーのシンプソンとのチームは進化を遂げ、19バーディを記録し、出場したフォーボール2試合で共に5&4で勝利した。
今年のフェデックスカップを制し、ボーナスを合わせて1100万ドルもの大金を獲得したスネデカーは、ルーキーの中で唯一初日にポイントを獲得できなかった。彼とフューリックは初日に北アイルランドが生んだスーパーデュオ、グレーム・マクドウェルとマキロイに3ダウンとされたが、最終18番でスネデカーがドライバーショットを右に打ち込むまでにイーブンに戻してみせたものの、結果は1ポイント差で敗れた。だが、2日目にはフォアサムでアイルランド人コンビを1アップで撃破してみせた。つまりは、欧州勢の中で最も名高いコンビと2日間に渡り合計36ホールをプレー、しかも1勝という結果を残してみせたのだ。
オーリーはニコラス・コルサートとポールターの力に頼る他はなかった。ウェストウッドの調子が戻らない中、ベルギー・ブリュッセル出身のコルサートは華々しいライダーカップデビューを飾ることに成功。フォーボールでは8バーディ、1イーグルを決め、もはや1人でストリッカーとウッズを下した印象を与えた。ポールターが欧州チームに勢いをつける前の時点で最重要と思われたのは、ダスティン・ジョンソンが17番で決めたバーディ、そして18番のパーだったに違いない。この時点でアメリカが10-4とリードを広げたが、彼らがメディナでの17番で良い結果を残した最後の瞬間だった。
ポールターは、「最終日、ユニホームの袖にセベの刺繍を入れたのには理由があった。相手にブルーとホワイトのユニホームで臨むと伝える為に。そうしたら信じられないことに勝ったんだ。僕らはセベの為に勝った」と逆転勝利を振り返った。
欧州選抜チームの部屋には、バレステロスが両手をオラサバルの肩に置き、遥か彼方を見やる写真が飾られていた。それを見たオーリーは何かを思い出し、感涙にむせんだ。オーリーが見ていたものはピンではなく、ゴルフ界の将来だった。18番のグリーン上で組んだスクラムの中、誰かが彼に今回の勝利の意味を尋ねた。すぐに答えられなかった主将だったが、「とにかく全において意味がある」、「彼(バレステロス)にとって、そして私にとって、そう、全てにおいて意味のある勝利だ」と振り向き答えたという。
彼らこそライダーカップが生んだ最高のパートナーたちだ。シカゴで彼らを凌ぐコンビがあるとすれば、仮に警察のエスコートがあろうがなかろうが、ブルースブラザーズことジェイク&エルウッドくらいのものだろう。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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