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2021年 全米プロゴルフ選手権
期間:05/20〜05/23 場所:キアワアイランドゴルフリゾート・オーシャンコース(サウスカロライナ州)

小林至博士のゴルフ余聞

コロナ恨めし 「全米プロ」会場キアワ島への憧憬/小林至博士のゴルフ余聞

2021/04/30 19:20

松山英樹の「マスターズ」優勝で、5月のメジャー「全米プロゴルフ選手権」(5月20~23日)が待ち遠しい。ただでさえ、会場となるキアワ島オーシャンコースに、ある種の思い入れがあり、楽しみにしていたからだ。

思い入れとは他でもない。コロナ禍がなければ、昨夏、ここでプレーしているはずだったのだ。大学院の同期の仲間との同窓会ゴルフである。著名なゴルフリゾートに集結して、3~4泊、酒盛りとゴルフを楽しもうという企画。1996年の卒業後、断続的に集合していたが、いつの間にか身体が元気なうちに、ということで、毎年開催してきた。日程とコースはただ一人の日本人、そして遠方から来る私の希望を優先してもらっているが、そうそう都合がつくものでなく、2、3年に一度の参加にとどまっている。

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アメリカにはゴルフリゾートが数多くあるが、キアワ島を含むサウスカロライナ州からジョージア州、そしてフロリダ州へと続く大西洋南岸は、亜熱帯の温暖な気候に恵まれ、有名リゾートが目白押しである。小平智が優勝した「RBCヘリテージ」の開催地、ヒルトンヘッド島もそのひとつ。マートルビーチも圧巻だ。75のゴルフコースがひしめき、ゴルフ場のなかに町があるような錯覚に陥る。

かつてニューヨークやシカゴなど東海岸の大都市から直行便が運航されており、私もニューヨークに在住していた1990年代後半に搭乗した。フライトアテンダントから、ゴルファー以外の乗客はまずいない、と聞いたのをなぜかよく覚えている。デービス・ラブIIIが住むセント・シモンズ島も有名だ。その南、フロリダ州はゴルフの都。私も住んでいたオーランドを含め、沿岸、内陸部問わず、ゴルフリゾートのオンパレードである。

そんな中で、キアワ島が特別な輝きを放っているのは、南国特有の青い空と白い雲、吹き荒れる海風、ピート・ダイ設計の独特のレイアウトが奏でるその美しさと、そこで繰り広げられたゴルフ史に残るドラマのせいだろう。

欧州選抜と米国選抜の対抗戦「ライダーカップ」。いまや世界で最も稼ぐゴルフ大会となったが、1970年代まではアメリカの圧勝が続き、知る人ぞ知るイベントだった。チームイギリスからチーム欧州となり、1985年に15大会、28年ぶりにカップを奪還。87年、89年と防衛に成功した。スイングの最中に咳をしただの、ボールが入れ替わっただの、対戦相手を罵り合うという、ゴルフらしからぬ戦闘モードが大衆の心をつかんだ。

ボルテージが高まるなかで開催されたのが1991年大会だった。期待通りの大バトルで、勝負は最終日最終組の最終ホールにもつれ込んだ。そしてベルンハルト・ランガー(ドイツ)が、決めれば欧州の防衛、外せばアメリカが奪還、という2mのパットを外した。そのときのランガーの崩れ落ちた姿とアメリカチームの狂喜乱舞という劇的なフィナーレをもって、沿岸戦争(War on the Shore)として語り継がれる伝説の大会となったのである。

そんなドラマに彩られたキアワ島オーシャンコース。いつかここでゴルフをしたい、との夢はコロナ禍でおあずけ。憧憬の思いも込めて、全米プロの観戦を楽しみたい。(小林至・桜美林大教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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