PGAツアー中継を継承 BSジャパネクストは「見つけて、磨いて、伝える」
2022年のメジャー王者たち(前編)
2022年のメジャー大会はいずれも目の離せないドラマ性と、素晴らしい話の筋書きであふれていた。今回は、そんなメジャーを制覇した王者たちについて振り返ってみよう。前編は「マスターズ」と「全米プロゴルフ選手権」。
◆シェフラーがオーガスタでメジャー初制覇
シーズン最初のメジャーとして、他に類を見ない伝統を誇る「マスターズ」の第86回大会が、4月7日から10日にかけてオーガスタナショナルGC(ジョージア州)で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大により制限されていた入場者数が、今年はタイガー・ウッズが栄冠に輝いた2019年以来となるフルキャパシティに戻された。
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スコッティ・シェフラーはそれまで約2カ月の間にPGAツアーで3勝を挙げ、世界ランキングでナンバーワンの座に上り詰めるなど、絶好調のままオーガスタナショナルへと乗り込んだ。3月下旬の「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」を制覇したことでゴルフ界の頂点に到達した米国人選手は、ジョージアにおける大会前の立場を、磨き抜かれたパフォーマンスによるメジャー初制覇へ向けた優勝候補の最右翼としていた。
シェフラーは3アンダーの「69」をマークした第1ラウンドでは、ボギーを18番のみにとどめる安定したプレーを見せ、初日を終えて首位に立った韓国のイム・ソンジェの2打差につけた。米国の「ライダーカップ」スターは、風が強まった2日目に「67」をたたき出すと、5打差の首位に立って大会を折り返し、36ホール終了時点のリードで大会記録に並んだ。
シェフラーは第3ラウンドの上がり7ホールで4ボギーを喫するなど難しいバックナインを強いられるも、3打差の首位で最終日を迎えることとなった。シェフラーを最も近い位置で追っていた「プレーヤーズ」王者のキャメロン・スミス(オーストラリア)が出だし2ホールでその差を1打まで縮めるも、米国人選手は3番の見事なチップインバーディで流れを引き戻した。結局、シェフラーは18番でダブルボギーをたたきながらも、1アンダーの「71」でラウンド。首位と10打差からスタートしつつも驚異の「64」をマークして単独2位に入ったロリー・マキロイ(北アイルランド)に3打差をつけて優勝した。
ラウンド後、シェフラーは自身がゴルフの4大メジャーに勝つ準備が整っているかどうかへの疑念が生じたことから、最終日の朝に「赤ん坊のように泣いた」ことを明かした。「たぶん最初に優勝を意識したのは、金曜のラウンドを終えた午後のことだったと思う」と振り返った。
「ここまでたどり着いたのは初めてのこと。僕は常に、この場へ来て競うことを夢見てきた。これから一生、この場へ帰ってこられるということが何を意味するのか、言葉にすることはできないし、この場をたたえるのにふさわしい言葉が見つからない」
◆トーマスが5年ぶりの「全米プロ」制覇
その1カ月後には、メジャー第2戦の「全米プロ」がサザンヒルズCC(オクラホマ州)で開催され、ここでもグリーンジャケットホルダーにして世界ナンバーワンのシェフラーが、当時「全米オープン」のタイトルを保持していたジョン・ラーム(スペイン)とともに、優勝候補の筆頭と目された。
第1ラウンドを終えて1打差の首位に立ったのは、猛追したオーガスタでの好調を持ち込み、全米プロにおける自己ベストとなる5アンダー「65」をマークした大会2勝のマキロイだった。初日にメジャー自己ベストの「66」を出したウィル・ザラトリスは、その翌日に自己ベストをさらに1打更新し、通算9アンダーとしてチリのミト・ペレイラを抑えて首位で折り返し地点に立った。マキロイは2日目を「71」とし、首位と5打差に後退した。
すると、今度は大会初出場だったペレイラが、第3ラウンドの折り返し前後5ホールで4ボギーをたたきながら盛り返して「69」で回り、3打差の首位で最終日を迎える展開となった。2位には、ペレイラ同様メジャー初制覇を狙うマシュー・フィッツパトリック(イングランド)とザラトリスがつけた。
しかし、成功を謳歌したのはこの3人ではなく、劇的な追い上げの末に同胞のザラトリスをプレーオフで退け、この大会を5年ぶりに制覇し、メジャー2勝目を挙げたジャスティン・トーマスだった。
首位と7打差で最終日を出たトーマスは3アンダーの「67」でラウンドし、クラブハウスリーダーとなる通算5アンダーでホールアウトした。ワナメーカートロフィを手にするものと思われたペレイラは、ティショットをクリークに打ち込んだ18番をダブルボギーとし、通算4アンダーで大会を終えた。その直前の組で回っていたザラトリスは最終ホールで勇敢なパーパットを沈め、1オーバーの「71」としてトーマスのスコアに並び、勝負を3ホールのプレーオフに持ち込んだ。
プレーオフ1ホール目のパー5の13番は、そろってバーディ。トーマスが302ヤードながらパー4の17番で2パットのバーディを奪うと、これが勝負の分かれ目となり、そのまま18番をパーとして大会を制覇した。
「今週、安全なリードは何打差かと聞かれたとき、『そんなリードはない』と言っていたんだ」と、1978年にオークモントでこちらもプレーオフの末に7打差を逆転して全米プロを制したジョン・マハフィーの記録に並んだトーマスは述べた。