優勝は逃すも、“脅威の存在”となったファウラー
2014年 全英オープン
期間:07/17〜07/20 場所:ロイヤルリバプール(イングランド)
全英の栄冠は威風堂々たるマキロイの手に
今回は独走劇とはならなかった。しかし、それでも、スリル溢れる展開となった第143回「全英オープン」の最終日に闘志漲るセルヒオ・ガルシアの挑戦を退けてメジャー3勝目を果たしたロリー・マキロイは、新たなる歴史を切り開いた。
これまで2勝していたメジャーでは、いずれも8打差の勝利を飾っていたマキロイだけに、6打差で迎えたロイヤルリバプールでの最終日は、彼と記録との戦いになるものと思われた。
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しかし、最終的にはプレッシャーのかかる終盤戦となり、問題は彼がメジャー制覇を遂げられるか否かとなった。そして、その問いに対し彼は断固たる回答を示し、1934年に「マスターズ」が設立されて以来、ヨーロッパの選手として初めて、異なるメジャー3大会での優勝を成し遂げたのである。
4回にわたり「ライダーカップ」のチームメイトであるマキロイに対し、2打差に詰め寄る展開に持ち込んだガルシアだったが、この地を舞台に行われた2006年大会では5位に入り、これで64回目のメジャー出場にして19回目のトップ10入りとなったスペイン出身の34歳は、15番で致命的なボギーを叩いてライバルのプレッシャーを軽くすると、最終的には最終日を「66」でラウンドするに留まった。
最終日を「71」でラウンドしたマキロイは通算17アンダーの「271」で大会を終え、勇敢に戦ったガルシアと、米国のリッキー・ファウラーに2打差をつけての勝利となった。上がり4ホールで3つのバーディを奪い、最終日を「67」でラウンドしたファウラーは、これで2014年のメジャーの成績を5位(マスターズ)、2位(全米オープン)、そして今回の2位とした。
近代ゴルフの世界では、マキロイはこれでタイガー・ウッズとジャック・ニクラスに続き、25歳までに3つの異なるメジャーを制した3人目の選手となった。
この夏をウェントワースで開催された「BMW PGA選手権」での優勝でスタートさせたマキロイは、全メジャーの内の四分の三の制覇を成し遂げることになったこの勝利により、公式世界ゴルフランキングを2位に戻し、これまでジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラス、そしてタイガー・ウッズのみが果たしているグランドスラム達成へ向け、残すは「マスターズ」のみとなった。
「信じられないくらい素晴らしい気分だ」とマキロイ。「『全英オープン』は誰もが勝ち取ろうと励むタイトルだし、こうしてクラレットジャグを掲げられるのは信じられない気分だね。今日は難しい展開だった。多くの選手が僕を捉えようとスコアを伸ばすなか、僕は焦点を定め、地に足をつけてコース上でのプレーに集中を保つ必要があった」。
「25歳でグランドスラム達成へ向け四分の三まで完了できたのはちょっとした偉業だと思う。でも、しばらく実感は湧かないんじゃないかな」。
これでマキロイは、マーティン・カイマーが8打差で優勝したパインハーストで開催された先月の「全米オープン」から2大会連続となる、メジャーでの初日から首位を譲ることのない“ワイヤー・トゥ・ワイヤー”での完全勝利を果たした。なお、カイマーはその「全米オープン」では、マキロイが2011年の「全米オープン」と2012年の「全米プロ」を制した際と同じく8打差で勝利を飾っている。
この日曜日は、マキロイが1番ホールでドライバーのティショットでフェアウェイど真ん中を捉え、6メートルのバーディパットを沈めていきなり2位との差を7打に広げたこともあり、同様の独走劇が予想された。
しかしながら、温和な天候が後続の選手たちのチャージを許す展開となり、中でも顕著にスコアを伸ばしたのはガルシアで、彼は1番、3番、そして5番でバーディを奪って前半を「32」で折り返した。
マキロイは5番と6番でボギーを叩き、今週初めての連続ボギーをスコアカードに記すと、7番ではガードバンカーからのパーセーブを強いられながらも、9番でバーディを奪って、2位との差を4ストロークに戻すことに成功した。
しかし、そのリードが保たれたのも僅か数分間のことで、ガルシアがパー5の10番で3.6メートルのイーグルパットを決め、マキロイとの差を2打差に縮めたのである。なお、マキロイはその10分後に、同じホールで2パットのバーディを奪うに留まっている。
2打目をギャラリースタンドに打ち込んだ12番ではガルシアがプレッシャーを感じる番になったが、それでも彼はその数秒後に笑みを浮かべていた。ボールはスタンドから跳ね返り、グリーンエッジの所まで戻ったのである。そこからのパーセーブに成功したガルシアは、ボールにキスをすると再度スタンドへとそのボールを投げて戻した。ボールは初めてスタンドに飛び込んだときと比べると、目に見えて遅い弾道でスタンドへと吸い込まれて行った。
同じホールでバーディパットを数センチショートしたマキロイは、続くパー3の13番でティショットをしくじってグリーンを大きくショートし、このホールをボギーとしてリードを2打差に戻してしまった。
そして勝負を決定付ける瞬間がやって来た。マキロイがティグラウンドで見守るなか、パー3の15番でグリーン脇のバンカーへ落としたガルシアが、そこからの脱出に失敗したのである。ガルシアは16番でバーディを奪いはしたものの、マキロイも同様にバーディを奪った。そして17番でガルシアがバーディパットをショートすると、事実上勝負は決した。
「リードは2打差より縮まることはなかったね」とマキロイ。「それで常にちょっとした余裕を感じることができた。幾つかバーディを奪えるホールが残っているのは分かっていたし、(バーディを奪った)16番は勝利を決定付けるホールになったと思う」。
「これは母(ロージー)の目の前で優勝した最初のメジャーになった。だから母さん、これは母さんのものだよ。来年、セントアンドリュースでこのトロフィーを防衛するのが待ち切れないね」。