タイガーの後継者?マシュー・ウルフの頭の中
大学出身の新人たちが米ツアーで輝く理由を探る
前週の「3Mオープン」でツアー初優勝を飾ったマシュー・ウルフにとどまらず、米ツアーでは今年プロ転向したばかりの新人選手たちの活躍が目覚ましい。ビクトル・ホブラン(ノルウェー)、コリン・モリカワ、ジャスティン・サーと、それぞれ数カ月前まではアマチュアとして大学ゴルフを戦っていた選手たちだ。
なぜ、彼らはいとも簡単に世界最高峰の舞台に順応できるのか? 彼らの高い能力を示す数字や大学ゴルフ界の現状を織り交ぜながら、いくつかの理由を挙げてみた。(ゴルフアナリスト/アンディー和田)
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■ 飛距離、ボール初速、ヘッドスピード
最近の米ツアーのように7400ydを超える設定になると、やはり飛距離が大切になる。大学ゴルフ部では専用施設で弾道測定器を使って練習し、恵まれた環境のもと工夫されたトレーニングで効率良くヘッドスピードを向上させている。下記は「3Mオープン」での最大数値。ウルフのボール初速はツアー1位のキャメロン・チャンプに次いで2位。松山英樹の平均初速が51位ということを考えれば、他の3人も優れた飛距離能力を秘めていると言えるだろう。
選手名/ボール初速/ヘッドスピード
M.ウルフ/187(83.5)/127(56.7)
C.モリカワ/173(77.3)/117(52.3)
V.ホブラン/176(78.6)/118(52.7)
J.サー/178(79.5)/120(53.6)
松山英樹/176(78.6)/118(52.7)
小平智/161(71.9)/107(47.8)
※単位:マイル/時(メートル/秒)
■ 学生時代から優勝争い&60台スコアの常連
4人とも大学時代に難コースで60台のスコアを多く叩き出している。ホブランは大学3年間の102ラウンド中60台のスコアが42回。モリカワはカリフォルニア大バークレー校時代に年間平均ストローク68.6(3年生)、69.0(4年生)と驚異的な成績を残している。(※タイガー・ウッズがスタンフォード大時代に記録した平均ストロークは70.61)
■ 難コースへの対応
近年、全米アマや大学トップレベルが集まる試合の会場は、ペブルビーチやリビエラ、パインハーストなど格がグンと上がっている。過去にメジャー大会が開かれたコースで経験を積み、難コースへの対応を学ぶことができているのも、米ツアーの舞台に早くから順応できる理由のひとつだろう。
■ ツアープロとの交流
ウルフやホブランは多くのツアープロを輩出しているオクラホマ州立大学のゴルフ部出身。先輩のリッキー・ファウラーは大学の試合会場に応援に行ったり、学生を南フロリダの自宅に招待したりして交流を深めている。米ツアーがどのような場所なのか? 成功するためにはどのような準備をしたらいいか? というアドバイスも送っているようだ。
■ メディア対応やTVカメラへの慣れ
2014年からゴルフ専門局が大学の試合を放送するようになり、露出が増えると同時に選手のメディア対応力も向上した。学生時代からインタビューにも慣れ、テレビカメラが接近しても慌てずに普段のパフォーマンスが出せようになってきている。
■ 代理人と契約金
世界アマチュアランキング1位やNCAA全米学生優勝、メジャー大会のローアマなどアマチュア時代に好成績を残した選手は、プロ転向時に日本円にして億を超える年間契約をスポンサー企業と交わし、代理人経由でツアーの推薦出場枠を確保してもらえるケースが多い。
ホブランとウルフはファウラーと同じ大手代理人事務所「ワッサーマン」と、モリカワはタイガー・ウッズやジャスティン・ローズが所属する「エクセルスポーツ」と契約を交わした。金銭的な不安をなくし、キャディやトレーナーを雇いしっかりとプランを立てることができるのはパフォーマンスにも直結する。
ウッズやフィル・ミケルソン、そして松山らは、限られた出場機会で結果を残し、予選会や入れ替え戦を経験せずに米ツアーの出場権を獲得した。ウルフも同じ道を進むことに成功し、残り3人もその可能性を残している。レギュラーシーズン最終戦まで4週間に迫ったが、その先の8月下旬プレーオフシリーズ最終戦まで新旋風が吹き荒れる可能性も十分。ニューフェースの活躍には今後も注目が必要だ。