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ミゲル・アンヘル・ヒメネスの胸板

初日から2日間をタイガー・ウッズとラウンドした松山英樹にとって、この第3ラウンドは、ちょっぴり寂しい気持ちもあったのかもしれない。「WGCブリヂストンインビテーショナル」3日目。早朝の悪天候を考慮し、3サムでのプレーとなったこの日、同組はライアン・ムーアミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペイン)といった、少しばかり“通好み”な選手との組み合わせとなった。

前半の3ボギーを同伴競技者のせいにするつもりは毛頭ない。けれど「良いショットを打っても、拍手もなくて・・・」。大ギャラリーを引き連れた2日とはやっぱり違う雰囲気。しかもショット前にじっくりと間を取るヒメネス、そして乱調のムーアのプレーにはどうも時間がかかる。松山本人は「(ペナルティを受けた)全英が終わってから、すごく意識している」と自らを律して行動しているのだが、この日は組全体が競技委員にプレーファストを促される場面があった。

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ファイヤーストーンCCはロングヒッター有利、というか、ある程度飛距離が無ければ、対等に渡り合うことすら難しいコース。しかしホールアウトしてみると、ヒメネスは「65」をマークして通算5アンダーの7位タイに浮上していた。昨年、欧州ツアー最年長優勝記録を樹立した49歳は、痛快にスコアを伸ばしていった。「曲がらないし、パターも入る。無理せずにゴルフをやっている感じですね」と松山。もちろんタイガーのゴルフとは真逆を行くのだが、別の強さを肌で味わうことができた。

とはいえ、来年シニア入りのヒメネスをただの老獪なベテランと見るのは、ちょっと違うらしい。この日のスタート前、会場内のツアーのフィットネスカーに立ち寄った谷口徹が言った。「朝、ヒメネスのトレーニングを見てビビった。上半身の鍛え方がハンパじゃない。あんなのやったら、自分は壊れてしまう」。胸まわりの筋肉を鍛えるウェートトレーニング用の機器を何度も上げている姿を目にした。「ランニングなんか、へっぴり腰で、彼にとってはトレーニングじゃないのかなあ。あの大きな胸板に、納得した」。

ヒメネスは“テニスエルボー”のため、左ひじにサポーターを巻いている。スタート前に約1時間半、トレーニング用のバスにこもるのがルーティン。練習場では、深く股関節を拡げてからストレッチを開始し、アイアンのシャフトの真ん中を持って、胸の前に伸ばした手首をグルグルと回す。全身を大きく回す独特の素振りを2度繰り返してから、アドレスに入る光景はおなじみだ。

ワインを飲む。葉巻も飲む。そして、額に汗して体を苛め抜く。奇抜な風貌だけではない、衰えない強さは日々の努力で培われている。(オハイオ州アクロン/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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