「ダフナリング」が大流行~ある男が教室の床に座り込み、世界的旋風へ~
2015年 ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション
期間:01/22〜01/25 場所:Arnold Palmer Private Course at PGA West
9キロ減量 ゆる~い“ダフナリング”はいずこへ?
石川遼が2015年の初戦を迎えた今週の米国男子ツアー「ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション」は、46年間続いた「ボブ・ホープクラシック」が2012年に医療・健康に関する金融商品を扱うヒュマナ社をスポンサーに迎えたトーナメント。会場のカリフォルニア州PGAウエストでは、ギャラリーブースにトレーニング器具が置かれたり、看板に「歩くことは、がんの予防になります」なんて具合に、健康を促すメッセージが記されたりと、なにかと“小うるさい”。
そんな大会に、今年ピッタリの選手が、2013年の「全米プロゴルフ選手権」覇者、ジェイソン・ダフナーだ。
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ダフナーといえば、ショットの前に繰り返される小刻みなワッグルと、なんだかいつも気だるそうな表情がトレードマーク。一昨年には、チャリティイベントで訪れた小学校で、生気のない顔のまま、床に足を投げ出して座った写真が話題を呼び、“ダフナリング”なるポーズが流行した。類まれなスター性…というよりは、その“ゆるキャラ”ぶりたるやツアー随一である。
ところが昨年後半あたりから、その様子が徐々に影を潜めていた。
カールヘアの襟足をバッサリ切ったと思ったら、ぽこーんと出ていたお腹もシェイプアップ。9キロの減量に成功して、2015年の自身初戦となった今大会に出場している。
昨年のダフナーは「全米プロ」の棄権理由となった左肩の痛みなど故障が相次いだ。
「何かやらなきゃゴルフができなくなっていた。単純なことだよ。選択の余地なし。正直言って、ここ2、3年は決していいプレーができていたわけじゃないんだ。去年はついにプレーできなくなった。プレーオフも、全米プロの連覇もできず…なによりライダーカップにも出られなかった。だから変えないといけなかった」
綿密なトレーニング内容はさることながら、やはり食事制限の効果が絶大だった。11週間におよぶグルテンフリーダイエット(タンパク質の一種であるグルテンの摂取を控え、血糖値を上げずに燃焼しやすい体にする方法)を実践。大好物のチョコレート、ピーナッツバターは厳禁。「各地を転戦するプロゴルファーにとっては最高に手軽」なファストフードも避け「もう最悪」。今後はカリフォルニアに来たときだけは、ハンバーガーチェーンの“イン・アンド・アウト”(In-N-Out Burger)だけは解禁するとのことだが、それも1年に1回と誓う。
仲良しのキーガン・ブラッドリーも「あいつは2011年、12年は確かに痩せていて、いいプレーをしていたんだよ。だから痩せなくちゃいけなかった。デブだったんだから」と納得顔。
ただ周囲、ファンはその変わり様に驚くばかりで、見慣れるまでに時間がかかりそう。それに全身から漂っていた、他にはない、ゆる~い空気感もすっかり鳴りを潜めてしまった。たくましい肉体を手に入れた一方で、プロとしては犠牲にするものも少しはあったりして。(カリフォルニア州ラ・キンタ/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw