<堀江x三田村6>ホリエモンが語る「国内ツアー」の重要性
2014年 マスターズ
期間:04/10〜04/13 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)
<堀江x三田村 7>ヒーロー不在 おっさん化する男子プロ
【三田村昌鳳(以下、三田村)】 堀江さん、日本のトーナメントは?
【堀江貴文(以下、堀江)】 何回も行きました。
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【三田村】 なにがつまらなくて、なにが面白かったですか?
【堀江】 うーん、比較対象がアジアンツアーくらいしかないんですよね。こないだたまたまタイ選手権に行ったんですけど、そこまで変わらなかったですね。日本人も結構来ていたんだけど。
【三田村】 違う聞き方をすると、どうしたらもっと面白くなる?
【堀江】 そうですねぇ。プロアマに出たことは何回かあるんですけど、女子の試合は和気あいあいとしていて良い感じがしましたね。
【三田村】 男子は?
【堀江】 男子はねえ、やっぱりおっさんですよね。あれに尽きると思うな。
【三田村】 (苦笑)それは年齢に関係無くそういう匂いが?
【堀江】 なんかこう、ショーだという、自分たちはプロスポーツ選手としてみんなに見られているという意識が足りないような気がしなくもない。僕、吉岡(徹治)さんとかと回っていた頃、よくジュニアの子とラウンドしてたんですよ。
【三田村】 うんうん。
【堀江】 当時高校生の子がいて、僕が長く出張(編注*収監のこと)に行っている間にそいつがプロになったんです。アジアンツアーとかに挑戦していて。で、こないだ久しぶりに知り合いのコンペで会って「久しぶりです」って言われたけど、全然分からなくて。
【三田村】 へっへっへ。どこのおっさんかみたいな?
【堀江】 そう。たばこ吸って、なんか田舎のヤンキーみたいな不良になっちゃって。21歳にしてこのおっさんはなんなんだって。
【三田村】 分かる気がする。
【堀江】 あの高校生の頃の純粋無垢な感じがたった3年でこんなになっちゃうんだって…。
【三田村】 僕はね、勘違いの仕方が違っているかなって気がするんです。僕は1970年にこの世界に入って、それはたまたまジャンボ尾崎という人間がデビューした年だったんです。そういう流れでジャンボとの付き合いがずっと長くなって、それこそ家は一日置きくらいに行って…。
【堀江】 僕、習志野のジャンボさんの家に行ったことありますよ。
【三田村】 あ、ほんと?
【堀江】 一回だけ、学生のときにバイトで行きました。
【三田村】 なんのバイトで?
【堀江】 テレビ局の年末特番でクイズ番組をやっていて。ジャンボ尾崎邸からの中継で電話回線を結んでそのクイズに参加出来るという仕組みを僕がバイトしていた会社がやっていて。
【三田村】 あー、そう。
【堀江】 大晦日にジャンボ尾崎邸に行って、ジャンボ軍団がガーッといる中で仕事していましたねぇ。
【三田村】 そのジャンボがデビューした時、“スポーツマン”って感じがしたんですよ。尾崎ってああ見えてすごくシャイで、人前で話すのが大嫌いっていうタイプなんだけど、自分は「プロスポーツ選手である」「スターである」って意識をものすごく明快に持っている。これが尾崎のプロ意識に繋がるわけなんだけど、試合は1つの舞台であり、アピールする場所である。だから、どういうパフォーマンスをするかってね。
【堀江】 うんうん。
【三田村】 尾崎って面白いのは、たとえばインタビューで「俺は努力してるんだ」ってあまり言ったことがないんです。「何で?」って聞いたら、「長嶋さんのようなスーパースターが“毎晩何時間も家で素振りやってます”って言ったら夢がなくなるだろ!」って。練習なんかしていないみたいな顔をしてワンと勝つのが、みんなにかっこいいって憧れを持たれる。いかに自分が憧れを持たれる選手になるかっていう考えがものすごかった。
【堀江】 なるほどね。
【三田村】 これはデビューしてまもなく奥さんから聞いたんだけど、彼は夜寝る前に毎日鏡をみてニヤっと笑う。自分の笑顔はどうなのかということのチェックをする。江川卓の例の空白の1日の時はその逆で、記者会見の前の晩、いかに無表情で真剣な顔ができるかっていう練習をしたという話を聞いたことがある。スーパースターになる人間は、なにかそういう部分を持っている。
【堀江】 うーん、それはあんまり感じ無いじゃないですか、最近。
【三田村】 自分がどういうパフォーマンスをしたら、みんながわーっとなるか。そういうことも研究して、さらに練習の仕方もやっぱりすごい。スランプのときもほぼ1日おきくらいに行っていた時に、ものすごい練習してるけどそういうことは一切言わない。名古屋の和合で日本オープンをやったときに17番でチップインして結果的に優勝したんですよ。
【堀江】 はい。
【三田村】 その夜、21時半か22時頃に習志野の家に行って、そしたら部屋にいなくて、外でボールを打っているんです。当然行けば「優勝おめでとうございます。あのバンカーショットすごかったですね。チップイン!」って言ったら「馬鹿やろー、おまえ!」って怒るんです。
【堀江】 うん。
【三田村】 「俺が今反省しているのは、あのティショットの4Iがなんで左に行っちゃったのか。あんな奇跡的な何万回に1回しか入らないのが嬉しいわけないだろ。それよりもティショットの4Iのミスをクリアにしないと次勝てない」って、そういう表現をするんです。
【堀江】 17番のチップイン覚えてます。それ、見た気がします。テレビで。
【三田村】 尾崎って面白いのは、「俺は優勝してカップをもらってふっとあげたときだけ嬉しい」って。降ろしたときはもう次のことを考えている。
【堀江】 そういう選手が必要なのは確かだし、日本の男子ツアーは全体的な底上げ、メディア戦略も含めて作っていかなといけないところじゃないかなって。じつは女子ツアーはすごく上手くいってるわけですよ。多分、日本のプロスポーツで唯一上手くやっているのは実はLPGAだと思います。唯一売り上げも試合数も伸びているし、世界から選手も戻ってきている。申智愛もアメリカの女子ツアーより日本の方がいいって言う。日本ってコンパクトに試合がまとまっているという利点があるじゃないですか。LPGAは3日間の試合が多い。あれも僕は別に悪いことじゃないと思うんです。短い試合で逆に悪いことがあるんだろうかって?そういう意味でも、あれはすごい上手くいっていると思いますね。
(第8回につづく)
- 堀江貴文
- 1972年福岡県八女市生まれ。東京大学在学中の96年に有限会社オン・ザ・エッヂを設立。エッジ、ライブドアと社名を変え、プロ野球球団やニッポン放送買収で世間の注目を集める。05年には衆議院の総選挙にも立候補したが、翌年に証券取引法違反で逮捕され、11年6月に収監。刑期を終えた現在はSNS株式会社のファウンダー兼従業員として活動を行っている。愛称はホリエモン。
- 三田村昌鳳
- 1949年神奈川県逗子市生まれ。立正大学卒業後、週刊アサヒゴルフ副編集長を経て、77年に独立して株式会社S&Aプランニングを設立。ゴルフジャーナリストとして73年から世界のメジャーを追い続けている。95年には米国でスポーツライター・ホール・オブ・フェイムを受賞。96年の第1回ジョニーウォーカー・ゴルフジャーナリスト賞最優秀記事賞を受賞。著書に「タイガー・ウッズ伝説の序章」「伝説創生」など多数。
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