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2019年 WGCフェデックス セントジュード招待
期間:07/25〜07/28 場所:TPCサウスウィンド(テネシー州)

佐藤信人の視点 勝者と敗者

ケプカとマキロイの大きな違い

「WGC フェデックスセントジュード招待」で、世界ゴルフ選手権初制覇を遂げたブルックス・ケプカ選手(米国)。私が注目したいのは最終日最終組、同組で回ったもうひとりの強者との違いについてです。

最終日、ケプカ選手のプレーは完璧なものでした。同組のロリー・マキロイ選手(北アイルランド)と1打差2位でスタートした彼は、序盤の3番(パー5)でバーディを奪った後、最後まで大きなミスをすることなく一度も相手に流れを与えず優勝を飾りました。一方のマキロイ選手はこの3番で短いパットを外し、バーディを取りこぼしたことが、結果的に響いた形となりました。

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今大会は2サムプレーだったため、最終日の優勝争いは1対1のマッチプレーの構図。ケプカ VS マキロイ――。2人は国籍も違えば、生い立ちも異なりますが、ショットまでの迷いのないルーティンやアドレスに入ってからの動作のスピード感など、類似している部分が多くあると思っています。

2人の大きな違いを強いて挙げるとすれば、プレー中の微妙なマインドの置き方でしょうか。ショットの良し悪しに関係なく、常に一切の感情を表に出さないケプカ選手。一方でマキロイ選手はどちらかというと人間的と言いますか、プレーで多くのギャラリーを沸かせていくタイプ。両者とも世界最高峰にいる選手なので、どちらが優位とかどちらが劣っているといった議論はできませんが、今季の成績に限ってはこの違いが結果に表れたように見受けられます。

マキロイ選手は、今季トップ10に12試合入る(今大会含む)ほど安定した成績を残しましたが、4大メジャーとなるといまひとつ活躍できませんでした。逆にケプカ選手は「全米プロ」の栄冠を含め、「マスターズ」「全米オープン」で2位、「全英」でも4位と、大舞台に強い印象を世界に与えました。

プレー中に人間性を見せてしまうマキロイ選手が、強さの半面で脆(もろ)さも見せる一方で、ケプカ選手は鉄の仮面を被り、鋼の精神力を見せつける。今大会のように目の前の相手を倒す戦いとなれば、同組選手を負かすためのマインドとしては、彼のようなスタイルが正解だったのかもしれません。

世界ランキング、ナンバー1とナンバー3、世界の頂きに立つ両者。ただ、微妙なマインドの違いは今回のように結果に大きく関わってくる。プレー内容だけでなくパーソナルな部分も把握しておくと、試合の流れや空気感を察知でき、より観戦が楽しくなることを再認識しました。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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