「全米プロゴルフ選手権」放送予定
2023年 全米プロゴルフ選手権
期間:05/18〜05/21 場所:オークヒルCC(ニューヨーク州)
二強を倒すのは誰だ? 「全米プロ」優勝者をGN解説陣が予想
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 事前(17日)◇オークヒルCC(ニューヨーク州)◇7394yd(パー70)
2023年のメジャー第2戦が18日(木)に開幕する。プロゴルファー世界一決定戦を前に、大会を中継するCS放送ゴルフネットワークの4人の解説陣が優勝者を予想した。佐藤信人プロ、内藤雄士コーチ、杉澤伸章キャディ、進藤大典キャディの戦前分析では、世界ランキング1位のジョン・ラーム(スペイン)、あるいは2位のスコッティ・シェフラーの“二強”が大会をリードしそう。アナリストたちの個性が表れた予想を読んで、観戦に没入だ!
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佐藤信人プロ
◎本命/S.シェフラー ○対抗/J.ラーム ▲穴/T.ハットン
シェフラーとラームは甲乙つけがたく、大本命の2人と言えるでしょう。少し前まではロリー・マキロイ(北アイルランド)を含む”トップ3”という感じでしたが、「マスターズ」の予選落ちでトーンダウン。二強に弱点めいたものはなく、どの大会もパットが人並み以上に入れば優勝争いが期待され、それほどショット力に優れたオールラウンドぶりを発揮しています。
オークヒルCCについて米国では「遠くに、高くボールを打てる選手が有利」という意見がありますが、2019年に当地での「全米シニアプロ選手権」に出場した手嶋多一プロは「かなり狭いホールが多かった」と言います。「飛んで曲がらない、正確なショットができる選手がここで優勝するのがよく分かる」そうで、私はトータルドライビング(TD/飛距離とフェアウェイキープ率のランキングを合算した順位)のスタッツに注目しました。2人とも当然上位ですが、6位のラームよりさらに安定感のある3位のシェフラーを本命に推します。
そうなると3番手選びが難しい。TD部門で2位のパトリック・カントレーも気になるところで、ここは9位のティレル・ハットン(イングランド)をチョイス。20年「アーノルド・パーマー招待」での優勝を含め、難コースに強い印象です。ことしは「ザ・プレーヤーズ選手権」で2位、2週前の「ウェルズファーゴ選手権」で3位。試合中はミスショット直後にクラブを地面にたたきつけるような気性の荒さを持ちつつ、インタビューではまるでコース上での出来事がなかったかのように、立ち振る舞いがすごく冷静。そんなギャップによる切り替えの早さも魅力です。
内藤雄士コーチ
◎本命/J.ラーム ○対抗/S.シェフラー ▲穴/B.ケプカ
海外のあるスポーツベッティング(賭け)では最近、「シーズンを通じてラームとシェフラーに賭け続ければ必ず儲かる」という話があるそうです。きょうレッスンに来た丸山奨王プロが教えてくれました(笑)。今の2人の力はそれほど図抜けているということ。予想に彼らの名前を挙げないわけにはいきません。ひと昔前までは開催コースごとにスタイルの違う選手にチャンスがありましたが、現代の超一流はそれを超越しているように思えます。
とくにラームの仕上がり具合は随一で、バックスイングがあれだけ小さく、常にラインからクラブを外さずに球を飛ばす能力がピカイチ。大きめのフェードを軸に、ドローもしっかり打てて、アイアンショットも、ショートゲームも、穴を探す方が難しい。一方でシェフラーのスイングは、チェ・ホソン選手(韓国)のようにフォローにかけて”暴れる”足元が注目されますが、インパクトまでの頭からのスイング軸、前傾姿勢がすさまじく安定しているからこそ、正確なショットを繰り返せるのです。
マキロイやザンダー・シャウフェレといった人気選手にも期待したいところですが、総合力という意味でもブルックス・ケプカがおもしろそう。マスターズも最終日の途中まで全体をリード。ここ最近の言動にはPGAツアーに戻りたい思いもにじむようで、LIV移籍後もモチベーションを高く保っている様子がうかがえます。ここで松山英樹選手を挙げるのは“反則”。解説陣も皆、優勝してほしいと思っているし、その可能性を信じて疑わない。分析は度外視して応援に回ります!
杉澤伸章キャディ
◎本命/P.カントレー ○対抗/S.シェフラー ▲穴/T.フリートウッド
メジャー初優勝がかかるカントレーは、PGAツアー通算8勝を米国の西、中央、東と各地で飾っています。あらゆる芝質をはじめ、異なるゴルフ環境への適応能力が高く、中でも毎年会場が違い、タフなセッティングで知られる夏場の「BMW選手権」を2連覇中。とくに2021年大会のケイブスバレーGCはオークヒルCCとの類似点があるように思います。長年タイガー・ウッズのバッグを担いできたジョー・ラカバ氏との新タッグも新鮮でしょう。
長い距離、深いラフの設定でおなじみの全米プロは、グリーンに到達するまでの出来が勝負を占います。直近2年で優勝したジャスティン・トーマス、コリン・モリカワもショットメーカー。ストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーン(T2G)1位のシェフラーを2番手にしました。ちょっと気になるのが、全体で201位とあまりに低いサンドセーブ率(35.29%)。オークヒルCCのグリーンは四角いホールが多く、一般的な丸型よりも、ラフに近いエリアにカップを切ることができます。アタックを過剰に仕掛けるあまり、バンカーに入ったら…と心配です。
欧州勢への期待も込めて、穴はトミー・フリートウッド(イングランド)。今季はPGAツアーでトップ5に3回入り、T2Gも9位のトップ選手。悲願の米国初勝利をメジャーで飾るストーリーも美しく、彼なら不思議ではありません。実はもう1人、大穴で気になるのが、手首痛で前週の「AT&Tバイロン・ネルソン」を欠場したジョーダン・スピースです。地元テキサス州ダラスでのスポンサー大会をスキップしてでも、本大会にかけているのでは…と斜めから疑ってみたり。
進藤大典キャディ
◎本命/J.ラーム ○対抗/J.トーマス ▲穴/C.スミス
いまのラームは全盛期のウッズを彷彿させる強さを感じさせます。マスターズで初日にダブルボギー発進しながら、優勝してしまうメンタル、気持ちの切り替えの早さ。なによりグリーン上でのプレーが際立ちます。ストローク・ゲインド・パッティングでツアー7位(+0.743)。パワーも精度も最高レベルのショットを持ってしてこの数字ですから、今季12回の出場でトップ10入り8回、優勝4回の実績も納得です。
オークヒルCCでは10年前、松山選手のキャディを務めました。ラフは僕が知る全米プロの中でも一、二を争うほど深く、突っ込んだら“出すだけ”というエリアもたくさん。ティショットがうまいトーマスを対抗馬に挙げます。ステディなプレースタイルはキャディのボーンズ(ジム・マッケイブ氏)とも好相性。18&19年で勝ったケプカ以来の大会連覇のチャンスが十分あるのでは。
迷ったあげく、3番手にはキャメロン・スミス(オーストラリア)を。LIV移籍後もショットの安定感はゴルフ界屈指で、直近3試合でトップ10に入りメジャーに向かいます。もちろん松山選手も候補のひとり。身体の状態が気になるとはいえ、大舞台での勝負強さと集中力は世界トップクラス。マスターズも最終日にパットのラインがひと筋合って、入ってくれれば逆転してもおかしくなかった。10年前は優勝したジェイソン・ダフナーと予選ラウンド同組で結局19位。飛距離でも負けていた当時を思い起こすと、いまの姿が頼もしい限りです。