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2012年 全英オープン
期間:07/19〜07/22 場所:ロイヤルリザム(イングランド)
全英オープンの作り方/競技委員・山中博史のロイヤルリザムレポート<1>
英国ロイヤルリザム&セントアンズで行われる2012年の「全英オープン」に出場を果たす日本人選手は総勢8人。しかし、そのロープの内側でプレーヤーとともに、ボールの行方に冷静に目を凝らす一人の日本人がいる。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の山中博史専務理事。かつて、青木功のキャディを務め、ここ10年来、海外4大メジャーすべての試合で、競技委員を務めている。トーナメントにおいて、欠くことのできない存在であるレフリー。それが“世界一”を決めるビッグイベントであれば重要度は一層高くなる。今回は大会を通じ、レフリーとしての立場、そして日本ツアーの代表としての立場から、全英の戦いをレポートしていただく。(GDO編集部)
「まず私にとって、思い出深いロイヤルリザム&セントアンズの記憶は、1988年に遡ります。キャディとして青木功選手に帯同していたときのことです。当時の青木さんは、初日「72」、2日目「71」で決勝ラウンドに進出しましたが、3日目の終盤にダブルボギーを叩くなどしてスコアを崩してしまったんですね(第3ラウンド「73」)。けれど、最終日に調子を持ち直し「67」をマークして7位タイに入りました。大きな舞台で、青木さんの“粘り”を結果として見られた一戦だったことを思い出します。
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そして、このリザムは2001年に私が初めて海外メジャーで競技委員を務めた試合でもあります。すごく緊張したのを今でも覚えています。それまでのリザムでの試合では、当然ながら一人の選手の打球しか目で追っていませんでしたが、レフリーの立場では常に1組、3選手のプレーに対して、視線を送ります。1番パー3から始まるという変わった印象が強く残っていましたが、キャディを務めていたときとは、違った視点でコースが見えたものです。
さて、11年ぶりに全英の舞台となったこのコースですが、今年大きく変わったホールは3つ。6番はパー5からパー4となり、7番は40ヤード近く伸びてグリーンも新たに新設されました、そして11番はティグラウンドが変わり、距離を56ヤード増やしました。11年前は難易度の低かった3ホールを改造したのです。そしてこのコースの特徴はなんと言ってもバンカーの多さ。01年は確か、175個でしたが、今回は206個。30個以上も増えているわけですから。もちろん、全英特有のポットバンカーに入れていけないのは明らか。大会開幕前は雨が続き、コースはウェットな状態ではありますが、だんだんと乾いてきています。ここからフェアウェイも硬くなり、ボールはいっそう転がっていくことでしょう。ティショットが重要になることは言うまでもありません。
さて、競技委員の仕事について少しお話しましょう。現地時間の日曜日(15日)の夜に英国入りした私は、月曜日の午前中からまず18ホールを歩き、コースをチェックしました。自分なりに各ホールについての質問をまとめ、(大会主催者などに)個別に確認して準備をします。火曜日は丸一日、JGTOの専務理事として各ツアーとのフェデレーション会議に出席しましたが、開幕前日の水曜日の午前中には競技委員会が開かれます。今大会における新しいローカルルールや裁定の注意点などを60~70人の競技委員で確認し合い、その後コースに出て1ホールずつ最終チェックをしました。競技委員は1人、もしくは2人ずつが各組について戦況を見守り、選手たちからのリクエストがあった場合などにルール説明や、処置に関する裁定を下します。今大会、私が予選ラウンドで帯同する組は、初日はダスティン・ジョンソン、グレーム・マクドウェル(北アイルランド)、藤田寛之選手のグループ。2日目はジム・フューリック、フレドリック・ヤコブソン(スウェーデン)、小田孔明選手の組となりました。今大会は、(たまたまではありますが)日本人選手が入ったペアリングにつきます。
全英オープンはなにせ天候が不安定で、風、雨が突然選手を襲ってみたり、急に晴れてみたりと、めまぐるしく環境が変わっていきます。そしてブッシュやヒースにボールが入ると、一斉にボール探しが始まったりと、メジャーの中でも「全米オープン」などと比べても、とにかくトラブルの多い試合でもあります。それだけ競技委員としての仕事も増えるわけですが…。
とはいえ、全英にはゴルフ本来の魅力が詰まっていることも事実です。自然との戦いとはよく言われますが、第1組が午前6時19分にスタートを迎えてから、全選手が1番ホールから出て行きます。予選ラウンド最終組のスタートは午後4時過ぎ。天候が悪い時間帯にプレーする選手もいるわけで、運、不運の差が大きいことは否めません。ただ、全英は「それがゴルフなんだ」というステージなのです。思うようにプレーできなかった選手は、ホールアウトした後、言い訳をしたくもなるでしょう。しかし、トッププレーヤーは言い訳すら惨めな気持ちになり、逆に自分の未熟さを教えられる。普段日本でプレーをしていると、新しい勉強が多く見つかるもの。だからこそ選手たち、我々レフリーもいろんな準備をして試合に臨んでいくのです」。