22歳下の相棒をリード 最年長・谷原秀人の影響力
2017年 WGCデルテクノロジーズ マッチプレー
期間:03/22〜03/26 場所:オースティンCC(テキサス州)
コースメモにテキサスの旗 谷原秀人は完全アウエーで「大金星です」
◇世界選手権シリーズ◇WGCデルテクノロジーズ マッチプレー 初日(22日)◇オースティンCC(テキサス州)◇7108yd(パー71)
オーガスタへの思いがマスターズチャンピオンを撃破した。4人1組の総当たり戦となる予選ラウンドの初日、谷原秀人は世界ランキング6位のジョーダン・スピースを4&2で破った。今大会は2週後の「マスターズ」出場権獲得のラストチャンス。立ちはだかった最初の難関をクリアした。
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ロープサイドの静寂が心地よかった。16番(パー5)、スピースは左サイドからの4打目がグリーンに乗らなかったのを見ると、勝負をあきらめて相手に握手を求めた。地元テキサスのヒーローの完敗に、現地のギャラリーはしょんぼり。谷原は表情を大きく緩めることはなかったが「嬉しいっすよ。一番メインにしていたところで勝てるとは、なかなかみんな思っていなかった。大金星ですよ」と、ゆっくりと喜びをかみしめた。
谷原はスピースとの対決を前に、テキサスの州の旗をあしらったコースメモのカバーを用意していた。完全アウエーの状況も「気にせずに。楽しめたのが良かった」と臆することなくスタート。1番を互いにバーディとすると、3番では3.5mのパーパットを「マッチプレーならではの、あとを考えなくて良いパット」と強気にねじ込んだ。
7番(パー3)で4mのバーディチャンスを活かして初めてリードした後は、相手のミスが目立ち始める。「ジョーダンはタッチが合ってないし、ショットもずっと左に行っていたのでチャンスはあると思った」。12番(パー5)ではスピースが右ラフからグリーン左の池に入れたのに対し、谷原は淡々とパーセーブして3アップとした。勝負を決め、静まり返ったホールをあとにする時、アンダーアーマー社のキャップとシャツでそろえた、スピースのファンと思しき少年の「ボールください」という願いにも優しく応えた。
マスターズ出場のためには今大会終了後の世界ランキングで50位以内に入る必要がある。1月から米ハワイ、シンガポール、ミャンマー、オーストラリア、メキシコと目標に向かって世界を奔走し現在60位。今大会で最低でもベスト8に入りたい思惑を持つ。総当たり戦の1位選手だけが16人の決勝トーナメントに進む形式では、一戦も落とせない重圧がかかる。それでも38歳は「(スピースは)ワールドランクが上の選手で、マスターズチャンピオン…どんなプレーをするのか楽しみだった」と少年のようなハートを失っていなかった。
スピース撃破の衝撃で、ラウンド後には公式会見にも呼ばれ、リップサービスも忘れなかった。とはいえ、綱渡りの厳しい戦いはまだ始まったばかり。「でも、(予選は)あと2戦残っている」というのが紛れもない本音だ。(テキサス州オースティン/桂川洋一)