なぜ「全米プロ」で泣いたのか 松山英樹2017年末インタビュー(2)
松山英樹2017年末インタビュー「すべてを無駄にした」オーガスタ3日目 松山英樹2017年末インタビュー(1)
12月3日、バハマで今年最後のゲームを終えた松山英樹は、その日の夕方にはキャディ、トレーナーとチャーター機に乗り込み、フロリダ・オーランドの自宅に戻った。米欧と日本で25試合に出場した一年の長い戦いを締めくくり、仲間たちと互いの労をねぎらうのもそこそこに、翌朝には近隣のコースに出て18ホールのプライベートラウンドを楽しんだ。
寝ても覚めても、ゴルフである。
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2017年はPGAツアーで2勝を挙げた。丸山茂樹と自身が持っていた日本人の通算での最多勝利数を塗り替え、「5」に伸ばした。6月のメジャー「全米オープン」で2位に入り、ダスティン・ジョンソンに次ぐ世界ランキング2位まで上り詰めた。(12月17日時点で5位)
プロ転向後5年で築き上げた実績。そうであっても、松山はこの一年を「フツー」の一言で片づけた。
「良かった時も悪かった時もあったな、という感じです。世界ランク2位?そうなった感じはしない。だって、あんまり優勝してないから。世界ランキングでその辺りにいる選手はみんな年間2、3勝を毎年重ねているようなイメージだった。だから自分がそこに行くのは相当、先の話かなと思っていたんです。だから、25、26歳でそこにいるのは素直にうれしい。ただ…まだ5勝ですからね。まだ、ですよ」
地に足をつけてひたすら頂点だけを見ている松山が、通過点で満たされるわけもない。言うまでもなく、まだメジャー制覇という大目標を成し遂げてない。だから「フツー」。興奮めいた様子はない。一年を振り返る言葉は穏やかで自然体で、芯がある。
毎年秋に開幕するPGAツアー。2016ー17年シーズンは16年10月の「WGC HSBCチャンピオンズ」で初優勝を遂げた。日本ツアーを含め、その秋は出場した5試合のうち4試合で勝利を飾り、世界を席巻するプレーを見せた。年明けの2月、「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」で17年最初のタイトルを獲得。ウェブ・シンプソンとの4ホールにわたるプレーオフを制し、大会2連覇を達成した。
地元米国のリッキー・ファウラーを破った前年大会は会場に「USAコール」が渦巻いたが、今年浴びた歓声はシンプソンと互角、いやそれ以上とも言えた。
「自分もそう感じましたね。応援してくれる人が結構いるんだなあって。連覇はそりゃうれしいですよ。あのコースでなかなかできるものではないと思う。あの時はショットも、パットも良くなりかけていた感じでした」
米国で多くのファンを味方につけ、2カ月後のメジャー初戦「マスターズ」に向け、誰もが“視界良好”と期待した。本人の思惑も同じだった。「(メジャーは)簡単に勝てるものじゃない。勝てる時に勝ちたいと思った。ツアーで優勝した勢いのまま、自信を持ってオーガスタに行きたかった」
ところが松山の勢いは、春の訪れとともに失速した。6度目のオーガスタナショナルでの戦いは11位タイ。「絶不調で行った中で、よく状態を戻せたなという感じもあります。でも、戻せたのに、その位置でしかないのかという気持ちもある。3日目の最終ホールで4パットをしてしまった。もったいないというか、完全にすべてを無駄にしてしまった」。16位で迎えたムービングデーを「74」として、優勝争いから脱落した。
「手ごたえは年々、大きくなっているところもあります。でも、オーガスタは行けば行くほど難しくなるところもあると思うんですよ」
手が届きそうで届かない。メジャータイトルとは、かくも遠いものなのか。その後の戦いは、そんな思いをいっそう膨らませるものになっていく。(編集部/桂川洋一)
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