冤罪に苦しむ、キーガン・ブラッドリー
2013年 ザ・ホンダクラシック
期間:02/28〜03/03 場所:PGAナショナルGC(フロリダ州)
フロリダスイング、2013年シーズンを占う上での新たな興奮をもたらす
およそひと月に渡る全米男子ツアー、フロリダスイングの季節がやってきた。2013年シーズンは、この地からマイアミに向けてスタートする。ビーチには日焼けした観光客たちが今か今かとトーナメントの開幕を心待ちにしている。
北に向かうハイウェイI-95沿いの巨大看板が、今週のホンダクラシックへ向けて街の雰囲気を高めている。PGAブルバードのすぐ南にある大きな広告だ。なんと言っても大会の顔は世界ランクNo.1で、南フロリダで生活をはじめたばかりのロリー・マキロイだ。断固たる決意と共に、ナイキのスウォッシュマークを身にまといながら、彼はハイウェイを眼下にこの地で暮らしている。
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ホンダクラシックの前回王者は、23歳となったマキロイ。彼はこの街に引っ越してきた住民として街の話題になっているのではない。彼は今や、押しも押されもせぬ注目の選手なのだ。1年前の今頃、大きな期待を受けながら「将来有望な選手のひとり」だった頃と状況は一変し、マキロイは猛烈な勢いでトッププロに登りつめた。今年は多くの注目を背負いながら、ゲームに臨まなければならないのだ。
すべてはホンダクラシックでの優勝が、彼を取り巻く状況を一変させた。それは単なるツアー優勝ではなかった。PGAナショナルリゾート&スパのタフなコースで、最終日「62」で回ったタイガー・ウッズの猛追を凌いで優勝したことが、その後のマキロイのブレイクを予兆していた。
優勝した直後、マキロイは世界ゴルフランクで初めてNo.1にのし上がった。翌週のフェデックスカップランキングでもトップに立った。マキロイは2012年の全米ツアーや欧州ツアーに参戦し、2011年の全米オープンでのメジャー大会の優勝に加え、PGAチャンピオンシップでも優勝を成し遂げた。PGAツアー選手投票でのMVPにも選ばれ、ナイキとの巨額契約も締結した。
ひとつ試合で勝つたびに、避けては通れないカベにぶち当たった。彼が14種類ものクラブやボールを試したことで、批評家たちは眉を釣り上げ批判した。やがて2013年のためらいがちなマキロイのシーズン開幕を、メディアはネガティブに論ずるようになった。これまでのところ、マキロイは肩をすくめながら静観しているようだが。
「まぁ、大丈夫だよ」。マキロイは自宅近くのPGAナショナルで数日前に語った。「今は良くなっていく途中のプロセスにいることは分かっているし、結果が残せなければ叩かれることも想定の範囲内だからね」。
「今シーズンまだ2試合しか戦っていない。今季はこれから20試合くらいは出場するつもりだよ。だからそんなに焦ることはない。焦って答えを取りこぼしてる訳でも、どこかにある答えを探し回っていることもない。あるがままの万事を受け入れること。今はただ、少し単調にまとまってしまっているだけなんだ」。
彼のコメントは理にかなっていた。少なくともマスターズの時期がやって来て、競争が激化するまで、しばらくの間は事足りるだろう。その間もマキロイは、新しいゴルフクラブを求めてチャレンジを続けることだろうが、そうこうしているうちに、道具に関する新たな話題 ~アンカーリングのパットに関するルール問題~ も聞かれるようになってきた。
確かに、ロングパターを使って、体にパターを密着させながらパットする“アンカーリング”が続くかどうか、このルール改正に関する騒動はこれからしばらくの間、煮え切らないだろう。願わくば、ゴルフの世界的なルールを設定する団体、全米ゴルフ協会やR&Aなどの組織が、2016年にアンカーリングを禁止とする提案を適正かどうか決める意義ある話し合いが持たれることを。
シーズン序盤の今の段階で、コース上の話題はそれほど盛り上がりを見せていない。マキロイとウッズの両者は、先週の世界ゴルフ選手権アクセンチュアマッチプレー選手権の第1ラウンドで負けてしまった。彼らが今週、住み慣れたフロリダの地でどんなプレーを見せてくれるのか、興味のバロメーターにはなっていないようだ。ストロークプレーでの試合は、2つのチャレンジングなコースで行われるし、ゴルフに最適な気候で行われるのにも関わらず。
実のところ、世界のトップ2とも言える彼らふたりは、すでに今週、ウッズのホームコースであるホーブサウンドのメダリストゴルフクラブで顔合わせをしていた。マキロイとウッズはそこで36ホールを回った。しかしなにも今週のフロリダでの試合を、ホームゲームと感じているのはウッズとマキロイだけではない。トップ25にランクされた13選手のうち、少なくとも彼ら8選手にとっても、今週は紛れもないホームゲームなのだ。
彼らとは、ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)、チャール・シュワルツェル(南アフリカ)、リー・ウェストウッド(イングランド)、昨年のPGAチャンピオンシップで優勝したキーガン・ブラッドリー、昨年の全英オープンで優勝したアーニー・エルス、そして2013年のシーズン開幕戦であるマウイ島カパルア・リゾートでのヒュンダイチャンピオンで優勝したシップダスティン・ジョンソンの8名だ。
ニューイングランド出身のブラッドリーは、現在フロリダ州ジュピターのベアーズクラブに居を構える。太陽がさんさんと輝くこの地へ戻ることは、この上ない幸せを感じるそうだ。
「慣れた地(ホーム)にいるのは本当に心地よいね」と、彼は言う。「このコースも大好きなんだ。このバミューダ芝のグリーンが大好きなんだ。暮らすには最高の場所だよ」。
パルムビーチ周辺で暮らすプロゴルファーにとっての最高のベネフィットは、長いことこの地で暮らすジャック・ニクラスに偶然出くわす機会があることだ。ニクラスはPGAナショナルコース、チャンピオンコースのアーズクラブを設計したように、多くのゴルファーが暮らすベアーズクラブの設計に関わった偉大な先輩なのだ。
彼らは、コース以外でも街の至る所でニクラスに出くわすチャンスがある。さらに本当に幸運であれば、ニクラスから良い影響を享受することだってできる。ニクラスは72歳。ゴルフ界の生きし伝説である。彼は70歳を過ぎてここに住み始め、妻のバーバラと5人の子供たちを育て上げ、地域コミュニティの中心的存在となっている。ニクラス・チルドレン・ヘルスケア・ファンデーションを通じて小児病院にニクラス・ケアセンターを設立したり、マイアミのパームビーチに暮らす特別な処置を必要とする家族に協力をしているのだ。
次週、マイアミのトランプドラルドで全米ツアーが行われる。世界ゴルフ選手権のキャデラック・チャンピオンシップだ。世界ランクでトップ50に入る選手の大半が参戦する予定だが、前年覇者のジャスティン・ローズ(イングランド)や、昨年のマスターズ覇者で前回大会で2位となったバッバ・ワトソンなども参戦する。
そして彼らは、タンパベイ・チャンピオンシップが開催されるインニスブルックリゾートの名高いコッパーヘッドへ向かう。そこではルーク・ドナルド(イングランド)が2012年の防衛戦に挑む。フロリダスイングは、その後に続くベイヒルクラブ&ロッジでのアーノルド・パーマーインビテーショナル・プレゼンテッドバイマスターカードの前哨戦となるだろう。この大会で7回優勝しているウッズは、過去4度の連覇を達成している。彼は今年、5度目の大会連覇に挑むことになる。